『条例制定権の限界を説明し、条例で罰則を設けることが、憲法31条に反しないかどうかを論ぜよ』
1.条例の意義および条例制定権の根拠
憲法94条は、地方公共団体は、「法律の範囲内で条例を制定することができる」ことを定めている。一般に、「条例とは、地方公共団体がその自治権に基づいて制定する自主法である」と抽象的に定義される。たた、実質論として、94条の「条例」の意味については争いがあるが、普通地方公共団体の議会の議決によって制定される条例、長の制定する規則、各種委員会の定める規則その他の規定が94条の「条例」であると解される(最広義の条例)。
条例制定権の根拠をめぐっては、92条に求める見解、94条に求める見解、92条と94条を並列的にあげる見解などがある。最高裁(最判昭和37年5月30日)は、「地方公共団体の制定する条例は、憲法が特に民主主義政治組織の欠くべからざる構成として保障する地方自治の本旨に基づき(同九二条)、直接憲法九四条により法律の範囲内において制定する権能を認められた自治立法に外ならない」と述べて、94条説、あるいは92条94条並列説の立場に立っている。もっとも、憲法は92条の「地方自治の本旨」の一環として94条で条例制定権を含む地方自治権の保障を明記したのであるから、94条によって創設されたのか、92条の「地方自治の本旨」に既に含まれているのかという議論にあまり意味はないと思われる。
憲法が第8章で地方自治制を設けたのは、立憲民主主義の維持・保全、即ち、分権と国政レベルでの代表民主政制の保管のためである。つまり、国家の権力を中央の政府と地方の政府とに分かつことによって権力の分散を図り、また、地方の政治については、地方の住民の参加を認めて住民の意思をより反映した形でこれを行わしめることにより、国民の意思が中央の政治に反映しにくい部分を補わしめようとするものである。このような観点から、地方公共団体には自治権(92条)が与えられたのであり、自治権の当然の内容として自主立法、つまり条例制定権(94条)が認められていると考えるべきと思われる。
2.条例制定権の限界
(1)条例制定権には、第1に、性質上の限界がある。条例制定権は、地方の政治を規律するために認められたものであり、その地方公共団体の自治事務の範囲に限られるのである。
(2)第2に、条例制定権には法令による限界がある。憲法94条は、「法律の範囲内で」条例を制定することができると規定していることから、条例は効力の点で法律・命令に劣り、法律に抵触する条例は無効となるのである。一方、地方自治法14条1項は「法令に反しない限りにおいて」条例を制定することができるとしている。そこで、法令で定める規制基準よりも厳しい基準を定める条例(上乗せ条例)や、法令の規制対象外事項について規制を行う条例(横出し条例)が、「法律の範囲内」のものであるといえるかが問題とされる。
この点、国はいかなる事務でも法律により国の事務とすることができ、国の法令で規制されている事項について条例は立ち入ることができないという法律先占論があった。 しかし、この考えを厳格に貫くと、既に法律が規律している事項について条例が定めることはできないこととなり、条例制定権が過度に制限されることになる。他方、地方公共団体の固有の自治事務の範囲内といえども、条例が法律に優先するとするのは、国会の憲法上の地位や地方議会の立法能力などを考慮すると妥当ではない。そこで、条例制定権の自主性に配慮しながらも、法律と条例との関係を調和的に解釈する
『条例制定権の限界を説明し、条例で罰則を設けることが、憲法31条に反しないかどうかを論ぜよ』
1.条例の意義および条例制定権の根拠
憲法94条は、地方公共団体は、「法律の範囲内で条例を制定することができる」ことを定めている。一般に、「条例とは、地方公共団体がその自治権に基づいて制定する自主法である」と抽象的に定義される。たた、実質論として、94条の「条例」の意味については争いがあるが、普通地方公共団体の議会の議決によって制定される条例、長の制定する規則、各種委員会の定める規則その他の規定が94条の「条例」であると解される(最広義の条例)。
条例制定権の根拠をめぐっては、92条に求める見解、94条に求める見解、92条と94条を並列的にあげる見解などがある。最高裁(最判昭和37年5月30日)は、「地方公共団体の制定する条例は、憲法が特に民主主義政治組織の欠くべからざる構成として保障する地方自治の本旨に基づき(同九二条)、直接憲法九四条により法律の範囲内において制定する権能を認められた自治立法に外ならない」と述べて、94条説、あるいは92条94条並列説の立場に立っている。もっとも、憲法は...