1.日本の産業、企業のこれからのあり方について
(1)はじめに
日本の大企業は1950年代後半からの高度経済成長期を初めとして、長期的に安定成長を続けていたが、1980年代半ばよりその成長は鈍化した。以降のバブル経済とその崩壊も含めて、日本の大企業群は国際競争力を失い、かつての繁栄を失ったかに見え、かつその状況は現在に至るまで変わっていない。そこで本項では、1980年代後半において日本企業はなぜ競争優位を喪失したかを、日本企業内部の変化、そして日本企業を取り巻く外部環境の変化という2つの視点から考察することにし、それを踏まえて今後の日本企業のあり方を考えることとする。
(2)内部環境の変化から
戦後の日本企業は、特定の都市に本社機能ならびに生産設備を置き、子会社・下請け・孫請けといった系列企業をも集中させた企業城下町を形成した。企業城下町とは、「低地価と広大なスペース、そして豊富な低労働賃金力を背景に、特定大企業が巨大な生産設備を建設し、地域の政治、経済、社会の根幹的地位を占め、さらに、地域を構成する諸要素を吸収しながら、特定大企業そのものが地域と重なり合う得意な空間」(関満博,「地域...