実際のところ、警察は住民の身体・財産の保護を行う存在であるのだから、犯罪を罰すると同時に、被害に遭った人を守ったり救ったりすることは理念上においても当然なさねばならないことであり、逆にこれまでがなにもやらな過ぎだったということはいえるが、近年の動きは今後の更なる被害者対策の発展に向けて警察が方向付けを確立したものといえ、いっそうの期待が持てる。
具体的施策の中では、いかに被害者とコミュニケーションを取るか、という点に重点があったと思うが、物理的被害に関しては刑罰や補償等でカバーできるとしても、精神的被害に関しては被害者が精神を癒されないことにはどうしようもない。そのためにはカウンセリング等による被害者の復帰が欠かせないが、これに関しては民間が受け持つべきだろう。というのは、警察のイメージとして、一般人は近づきにくいというものがあり、警察がからんでくると気軽に相談も出来ない雰囲気があると思われるからである。民間ボランティアによるカウンセリングで被害者の心にゆとりができてから、警察がかかわってくるというかたちも考えられ得るのではないだろうか。
被害者学レポート
被害者対策における国の役割・民間の役割
1 講演のプロトコル
警察と被害者の関係は、すなわち行政と国民の関係ということになるが、それはそれまでの公と私という二面的な関係から、行政と加害者と被害者という構造的な三面的なものへと発展してきている。その中で警察は、①経済的補填、②精神的ケア、③法的地位の確立を軸に、被害者対策を進めている。
①の経済的補填では、昭和56年1月から施行された犯罪被害給付制度による給付金が代表的である。これは41年5月の横浜市通り魔殺人事件や48年8月の三菱重工ビル爆破事件などによって被害者が救済されなかったことの影響が大きい。犯罪被害者等給付金は被害者当人に給される障害給付金と被害者が死亡した場合の遺族給付金がありこれまでに約4000人に支給された。
②の精神的ケアは、現在整備が急速に進められているもので、警察・民間ボランティア双方による被害者の精神的救済が行われている。平成3年10月、①の給付制度創設10周年のシンポジウムにおける精神的援助の訴えが犯罪被害者実態調査研究会の設立を生み、その報告に基づき8年2月に「被害者対策要綱」が制定された。...