1 本判決の争点
本判決における争点は、?Cは背信的悪意者か、?Cが背信的悪意者であるとして、その転得者Yは、Y自身が背信的悪意者にあたるか否かを問わず、当然に177条の第三者から排除されるのか、?Xは、Yに所有権取得を対抗できない場合でも、その道路管理を対抗することができるか、の3点であるが、今回の報告では??を中心に検討する。
背信的悪意者からの転得者
最判平成8.10.29 民集50.9.2506 判時1609.108・公道確認等請求事件
1 本判決の争点
本判決における争点は、①Cは背信的悪意者か、②Cが背信的悪意者であるとして、その転得者Yは、Y自身が背信的悪意者にあたるか否かを問わず、当然に177条の第三者から排除されるのか、③Xは、Yに所有権取得を対抗できない場合でも、その道路管理を対抗することができるか、の3点であるが、今回の報告では①②を中心に検討する。
2 民法177条の「第三者」の範囲
明治41年12月15日の大審院民事連合部判決以来、民法177条の登記がなければ対抗できない「第三者」の範囲については、登記欠缺を主張する正当な利益を有しない者には、登記なくして物権変動を対抗できる(制限説)とされている。
その理由として、①不動産取引の安全を図るために、登記を公示方法とした177条の立法趣旨にかなう。②家屋を権限なく破壊した不法行為者に対し、家屋所有者が損害賠償を求めても、登記の欠缺を理由にこれを拒めるという結果は不当であることが挙げられる。
3 判例と学説
(1)善意悪意不問説
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