社会保障の中で年金の次に規模の大きいものが医療である。国民医療費は毎年一兆円程度増加しており、現在30兆円になっている。高齢化の進展により、これからますます増えていくその規模をどのようにして適正なものとしていくかが課題となっている。わが国の医療制度はWHOが2000年に行った各国比較では世界一となっている。その理由としてあげられるのは費用をそれほどかけずに高い効果をあげているからである。わが国は平均寿命・健康寿命はともに世界一であるなど健康水準は高く、ひとりあたりの医療費は先進国の中でも比較的低い水準である。
それでは高齢化の進展はどのようにわが国の医療制度にどのように影響を与えているのだろうか。近年の医療費増加の大部分は、65歳以上の高齢者についての医療費の増加で説明することができる。65歳以上の一人当たり医療費は平均年間60万円あまりであり、65歳未満のそれが15万円なのに対して約4倍となっている。医療費全体に占める65歳以上の医療費の比率は、現在約5割となっているが、高齢化の進展によって2025年度には7割にまで増加するとされている。全国民が、5000以上あるいずれかの保険に加入することとなっており、どの保険も、高齢化の進展によって財政状況が苦しくなっているのは同様である。なぜ高齢化で苦しくなるのか、そのメカニズムは保険によって違いがある。たとえばサラリーマンの場合を考えてみると、大企業のサラリーマンはその企業の健康保険組合に加入しているはずである。しかし、定年などによって退職すると、市町村の運営する国民健康保険に移行することとなる。このため、健康保険組合加入者の平均年齢34歳なのに対して、市町村国保の加入者の平均は52歳と、市町村国保では高齢化が他の健康保険に先駆けて進んでいる。
わが国の医療保障の課題について
社会保障の中で年金の次に規模の大きいものが医療である。国民医療費は毎年一兆円程度増加しており、現在30兆円になっている。高齢化の進展により、これからますます増えていくその規模をどのようにして適正なものとしていくかが課題となっている。わが国の医療制度はWHOが2000年に行った各国比較では世界一となっている。その理由としてあげられるのは費用をそれほどかけずに高い効果をあげているからである。わが国は平均寿命・健康寿命はともに世界一であるなど健康水準は高く、ひとりあたりの医療費は先進国の中でも比較的低い水準である。
それでは高齢化の進展はどのようにわが国の医療制度にど...