2012年6月、河村たかし政治塾の講演に関する感想レポート。
講演者:植草一秀
講演内容:消費増税ほか亡国の経済政策運営
河村たかし政治塾 提出用レポート 2012年7月3日
講演者:植草一秀 講演内容:消費増税ほか亡国の経済政策運営
講演が始まる前、レジュメを見た時点では総花的な内容になるのではないかと思っていた。だが、実際に話が始まると、とてもわかりやすく現在進んでいる消費増税のまずさが伝わってきた。
財務畑を中心に政治キャリアを積み重ねてきた野田首相が、財政再建に強い関心を抱くのは理解できるが、植草氏が紹介していた3年前の野田さんの発言を改めて知ると、「人間ここまで変節できるものか」と考えざるを得ない。政治に期待できない、誰が首相になっても同じ・・・こうした政治不信を加速させる超本人の1人に今の野田さんはなっている。無駄の削減をしてから社会保障、財政再建のための増税を本格化させるという国民の理解を得るための正攻法を歩もうとしない現政権。マニフェストの反故、政治主導の後退など民主党政権の粗が一気に噴出してしまって分裂にまで到っているが、何よりも問題なのは国民の支持が得られないと同時に、中長期的かつ抜本的に話を進めなければならない「社会保障と税」という政策課題をメインに取り組んでいるにも関わらず、そこから理念や誠意が全く伝わってこないという点にある。たとえ欧州の債務危機のようなことが日本でも起こるかもしれないとしても、それがどれくらいの確率で起こりそうなのか、なぜ5年・10年・15年といった長いスパンで負担を上げぬように対処できないのか。そうしたことをしっかりと説明する義務がある。そこをなおざりにしておけば「なんかよくわからんけどこのままじゃ大変そうだから増税しますわ」といういい加減な姿勢しか伝わってこない。そもそも消費増税を「今」決めようとするわけは何なのか?欧州危機のようなものを回避するためなのか?社会保障の公平性を高めるためなのか?社会保障制度の改革のためなのか?そのすべてのためと言うならば、「今」性急に民主・自民・公明という大連立状態で決めるほど日本の財政・社会保障は待ったなしなのか?待ったなしだと国民も思っているなら、消費増税への理解も広がっているはずだ。それが広く支持されていないということは、「消費増税」を主要テーマとして国民は見ていないことを意味する。それにも関わらず、丁寧な説明を経ずに増税を進めようとするのは政治のエゴにすぎない。植草さんの話からは、あまりにも財務省の意向を尊重してしまっている首相のスタンスが浮き彫りにされ、日本財政が今すぐにパンクを起こすような状況にはないというメッセージが伝わってきた。前回のリチャードクーさんの話よりも専門的な話は薄く、経済に疎い私のような人にとってもわかりやすい説明をされていたと思う。
消費増税、日本の財政について理解を深める大きなきっかけになった。だが、最後の方に駆け足で説明された明治~戦後までの米官業の様々な圧力の話は少々とってつけたような内容だった。終盤の内容は別個の講演としてやるべきものであり、こんな中途半端に軽々しく扱うほどのスケールの話ではないと感じた。