1990年代日米経済における設備投資

閲覧数1,814
ダウンロード数5
履歴確認

    • ページ数 : 2ページ
    • 会員550円 | 非会員660円

    資料紹介

     1990年代、日本経済の成長率は停滞してきた。とりわけ、90年代後半の日本経済の成長率は先進国の中でも最も低い水準にとどまった。他方、米国は1991年以降、2000年にいたるまで一貫して安定した経済成長を遂げた。このように90年代の日米経済には対照的な構造が見て取れるが、背景には両国企業の設備投資パフォーマンスの相違が存在していたと考えられる。以下ではこの点について述べたうえで、2003年後半以降の景況改善の背景に設備投資の低迷からの脱却があることを論ずることにする。
     90年代日本の企業行動の基本的特徴は、設備投資の手控えである。とりわけ1990年バブル崩壊以降、設備投資の成長パターンは低迷し、マイナス成長も記録している。また、実質GDPへの設備投資寄与度も減少した。この背景には、バブル期における過剰設備投資と労働分配率の漸増傾向、資産価格の下落という3つの要因に起因する企業収益力低下が存在した。産業別にみると、製造業が93年をボトムに利益率を回復していったのに対し、非製造業(サービス業)は98年になるまで長期に低迷を続けた。利益率の低迷は、企業の投資余力を奪い、設備投資の成長率を低迷させたのである。
     対照的に、90年代米国企業は旺盛な設備投資を継続した。特に90年代後半には設備投資のキャッシュフロー比が120%を上回り、過熱気味の投資ブームが巻き起こった。この背景には、労働コストの低さに基づく利益率の高さによる投資余力の厚さとともに、直接金融中心の資金供給メカニズムが存在した。とりわけ米国財務省証券の日本資金による購入が国内、海外資金の米国株式市場流入と米国株の高値を生み出し、このことが旺盛な設備投資を保障したのである。

    資料の原本内容 ( この資料を購入すると、テキストデータがみえます。 )

    1990年代日米経済における設備投資
     1990年代、日本経済の成長率は停滞してきた。とりわけ、90年代後半の日本経済の成長率は先進国の中でも最も低い水準にとどまった。他方、米国は1991年以降、2000年にいたるまで一貫して安定した経済成長を遂げた。このように90年代の日米経済には対照的な構造が見て取れるが、背景には両国企業の設備投資パフォーマンスの相違が存在していたと考えられる。以下ではこの点について述べたうえで、2003年後半以降の景況改善の背景に設備投資の低迷からの脱却があることを論ずることにする。
     90年代日本の企業行動の基本的特徴は、設備投資の手控えである。とりわけ1990年バブ...

    コメント0件

    コメント追加

    コメントを書込むには会員登録するか、すでに会員の方はログインしてください。