過去に実際の起きた粉飾決算事件(㈱アルデプロ)を題材に、粉飾の動機や、監査人が行うべきであった監査手続を分析したレポートです。もとは公認会計士の実務補修所の課題ですが、監査論等の講義をとっている学生にもお勧めです。
粉飾決算の動機とその手法及び監査計画立案時と監査手続実施時において留意すべき事項を論ぜよ。
粉飾決算の動機及び手法の概要
今回取り上げる会社は、東京証券取引所マザーズ上場の不動産業を営む会社(株式会社アルデプロ。以下A社とする。)である。
本件は、A社が公表した各期の業績目標の達成を強く意識した営業活動を行う中で、取締役がその達成を優先するあまり、売上高と利益を確保するため、本来は交換取引に過ぎないものを仕入取引と売却取引が適正に行われたとものとして売上計上していたほか、買戻し条件付売買であるにもかかわらず売上計上を行うなどしていたほか、引当金の非計上等の不適正な会計処理を行っていたものである。
粉飾決算の具体的手法
平成19年10月30日の取引
A社は、不動産の売却について、売却先のM社から不動産を仕入れ、差額を現金で決済する契約を予定していたが、契約の直前にM社側で資金の用意が困難になった。しかし本件取引がなくなると業績目標の達成が困難となることから、仕入物件と売却物件とをほぼ同額であるとみなして取引することにした。このため、本来は、交換取引として会計処理すべきところ、A社...