臨床心理学における枠

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    資料紹介

    治療構造とも呼ばれる心理療法における「枠」とは、「物理的な空間」と「時間」とクライエントも含まれる「関わる人」によって規定・構成される。
    (1)時間の枠
    面談のひにちと時間を設定し、よほどの都合がない限り、治療者は決められた日の決められた時間にしかクライエントと会わない。例えば、週1回、水曜日の午後3時から3時50分にAさんとカウンセリングを開始することになれば、原則として、初めに相互了解された休み以外はその曜日また時間にしか面談しないようにする。
    (2)場所の枠
    面接室や子どもの場合はプレイルームで面談するなど、一度会う場所を決めたらそれ以外の所では面談しないようにする。
    (3)料金の枠
     相談をする側、受ける側が責任感を持って心理療法を進めていける金額を設定する。これは相談機関によって異なり、公共の相談機関では無料となるが、病院や民間の相談機関では料金をかけることになる。この場合、当たり前のことではあるが法外に高い料金ではいけない。
    (4)治療者という枠
      治療者はよほどの事情がない限り同じ人間が面談し続ける。そして、(1)から(3)を維持するのは、当然相談を受ける治療者でありそこにも治療者という枠が生じる。

    資料の原本内容

    心理療法における枠について
    治療構造とも呼ばれる心理療法における「枠」とは、「物理的な空間」と「時間」とクライエントも含まれる「関わる人」によって規定・構成される。
    (1)時間の枠
    面談のひにちと時間を設定し、よほどの都合がない限り、治療者は決められた日の決められた時間にしかクライエントと会わない。例えば、週1回、水曜日の午後3時から3時50分にAさんとカウンセリングを開始することになれば、原則として、初めに相互了解された休み以外はその曜日また時間にしか面談しないようにする。
    (2)場所の枠
    面接室や子どもの場合はプレイルームで面談するなど、一度会う場所を決めたらそれ以外の所では面談しないようにする。
    (3)料金の枠
     相談をする側、受ける側が責任感を持って心理療法を進めていける金額を設定する。これは相談機関によって異なり、公共の相談機関では無料となるが、病院や民間の相談機関では料金をかけることになる。この場合、当たり前のことではあるが法外に高い料金ではいけない。
    (4)治療者という枠
      治療者はよほどの事情がない限り同じ人間が面談し続ける。そして、(1)から(3)を維持するのは、当然相談を受ける治療者でありそこにも治療者という枠が生じる。
    心理療法はこのような基本的な枠組みをもって行われる。
    枠組みは心理療法において基本になるものであり治療を進めていくために重要だといわれる。ではなぜ枠は重要なのだろうか。枠がないとどうなるかを考えてみることにする。
    まず、時間と場所の枠がなかったら
    時間と場所の枠がないということは面談の時間と場所が決まっていないので毎回違う場所違う時間で面談をするということになる。これではクライエントは落ち着いて相談することができないし治療者だってしっかり話を聞いて治療することがやりにくい。
    次に料金の枠がなかったら
    もし低すぎるような料金設定だったら、治療者もクライエントも責任感を持って心理療法を進めていけずどこかいいかげんなものになってしまうかもしれない。逆に高すぎても治療者とクライエントに距離ができたり、料金にみあった効果をクライエントに過度に期待させてしまったりすることにもなりかねない。
    治療者という枠がなかったら
    治療者が面談の度に変わったら安心して相談ができないし、引き継ぎがきちんとできていないと一度話したことをもう一度話さないといけなかったりしてスムーズに面談ができない。
    枠組みは、何か縛られるような、固い印象をもつかもしれない。しかし、枠組みは決してクライアントまた治療者を縛りつけるものではない。
    心理療法は心理的手段を用い、相手の知覚を通じて、治療者や治療の場所、設備を含む周囲の人や物から受ける心理的な影響を、治療の手段としている。そのため、治療の手段である時間や場所がたびたび変わったらきちんとした治療ができない。
    そして、心理療法は治療をする者と受ける者との複雑で多面的な対人関係のうちに成り立ち、そのなかでも治療という特殊な一面である。こうした枠組みがあってはじめて、日常とは異なる、心理療法の場が生まれ治療ができるのだと思う。普段とは違う場で、そこでしか出会わない治療者だからこそ、内面の話ができるのである。
    また、クライエントにとって心理療法は戦争と言えるほど厳しいものだ。クライエントにとって敵か味方かわからない治療者に相談することはかなりの信頼関係が必要だがそのためにも枠は大切だと思う。基本的な枠組みを簡単に崩したりすると信頼関係は築けない。
    他にも、臨床心理活動において、枠をきちんと設定することは、相談に来られるクライエント(心的世界)と、またセラピストをも守ることになる。心の奥には、様々な可能性があるが、それは時に危険な形で行動につながる場合もある。そうした破壊性や行動化から、その場の二人を守る役目も持っている。このように、何も枠がないことが決して自由なのだというわけでなく、枠の中であるからこそ、心が活性化され、その微妙な綾が枠組みに触れて、表現されることになるのだと思う。
     枠組みそのものの意味合いを理解し、基本としての心理療法のあり方を体験的に身につけることが、心理臨床家には必要だと思う。特定の理論を身につける以前に、面接という形態で人と人が会いつづけると、その場にどういうことが生じてくるのか、治療者はどういう体験をするのか、クライエントにはどういう心の動きが生じて、それが言葉や態度に示されるのか、そうしたことへの関心と体験を通した理解がまず必要だと思う。

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