遺産分割調停の問題点

閲覧数3,027
ダウンロード数4
履歴確認

    • ページ数 : 6ページ
    • 会員550円 | 非会員660円

    資料紹介

    遺産分割調停の問題点
    下記の事例において、事実関係と調停処理にどのような法律上の問題があるか指摘、論評しなさい
    遺産分割とは、相続財産の清算が行われる例外的な場合(限定承認・財産分離・相続人不存在)を除き、共同相続関係の一般的な経過における相続財産移転の問題を決着させる手続きである。
    この遺産分割は協議で行うのが原則となっているが、協議が不調ないし不可能な場合には、裁判分割(民907条)によって行われる。この裁判分割は、家事審判法に基づく調停手続(家審21条、家審規129条以下)と審判手続がある。
    本件の場合も、再三遺産分割協議を重ねたが、解決をみなかったため、調停による遺産分割が行われているものである。
    本件のような遺産分割調停では、当事者のすり合わせに終局したり、複数の争点に対する判断の棚上げ、事件の長期化等さまざまな問題がある。このような手続きに終わらせないためには、はっきり争点を確認したうえで、調停の進行を図るべきである。すなわち、相続人の確定、遺産分割の対象となるべき財産の範囲の確定、寄与分や特別受益の有無、遺産分割の方法等の争点を明確にして調停を進行していかなければならない。
    また、本件においても事実上、生命保険金の受取人が記されているにも関わらず、それが問題とされ、死亡退職金も会社の規定上遺族に給付されるという性質を有するものでるにも関わらず、その帰属及び相続財産に含まれるか否かが争われている。このように、事実関係と調停処理においてはさまざまな問題点が存在する。
    本件の場合の問題点を以下に述べていく。
    <事実関係>
    Ⅰ 遺産の範囲確定の問題
     本件調停の場合、遺産として争われているものとして、不動産(宅地・建物)、動産(50万相当)、預貯金400万、死亡退職金800万、生命保険金500万、葬儀費用20万が挙げられる。これらのすべてが遺産の範囲に含まれるか問題となる。
    死亡退職金
     死亡退職金は、公務員や民間企業の従業員の死亡に際して、勤務先から支払われる退職金で、法律・内規・就業規則などで、受給権者の範囲や順位が定められている。退職金の法的性質として賃金の後払いと遺族の生活保障が挙げられおり、前者の性質に着目すれば遺産性を肯定する方向に、後者のそれに着目すればこれを否定する方向に傾く。しかし、死亡退職金の法的性質及び遺産性はこれを一律に決しうるものではなく、具体的な事案に応じて個別的に決すべきもののであるから、死亡退職金に関する支給規定の有無によって場合わけをし、これがある場合には支給基準、受給権者の範囲又は順位などの規定内容により遺産性を検討し、これがない場合には従来の支給慣行や支給の経緯等を勘案して個別的に遺産性を検討することになると考える。
     判例(最判昭55.11.27)も、受取人を定める規定を解釈し、民法の相続人とは範囲・順位が異なって定められている場合には、相続財産にはならず遺族固有の受給権があると判示する。
     本件では、被相続人の勤務していたX会社においての規定に、「死亡退職金は、在職中に死亡した職員と世帯を共にする遺族(内縁の妻)に支給する」と規定されており、本件死亡退職金については、遺族の生活保障としての性質を持つことが明らかであることから、当然に被相続人と世帯を共にするふみ及びはなに支給され、これは、これらの者が自己固有の権利としてこれを取得するものと考える。また、遺産には相続財産には含まれないと解することができる。
    生命保険金
    生命保険金においては、受取人が相続人中の特定の者である場合には、第三者のためにする契

    資料の原本内容 ( この資料を購入すると、テキストデータがみえます。 )

    遺産分割調停の問題点
    下記の事例において、事実関係と調停処理にどのような法律上の問題があるか指摘、論評しなさい
    遺産分割とは、相続財産の清算が行われる例外的な場合(限定承認・財産分離・相続人不存在)を除き、共同相続関係の一般的な経過における相続財産移転の問題を決着させる手続きである。
    この遺産分割は協議で行うのが原則となっているが、協議が不調ないし不可能な場合には、裁判分割(民907条)によって行われる。この裁判分割は、家事審判法に基づく調停手続(家審21条、家審規129条以下)と審判手続がある。
    本件の場合も、再三遺産分割協議を重ねたが、解決をみなかったため、調停による遺産分割が行われているものである。
    本件のような遺産分割調停では、当事者のすり合わせに終局したり、複数の争点に対する判断の棚上げ、事件の長期化等さまざまな問題がある。このような手続きに終わらせないためには、はっきり争点を確認したうえで、調停の進行を図るべきである。すなわち、相続人の確定、遺産分割の対象となるべき財産の範囲の確定、寄与分や特別受益の有無、遺産分割の方法等の争点を明確にして調停を進行していかなければならない...

    コメント0件

    コメント追加

    コメントを書込むには会員登録するか、すでに会員の方はログインしてください。