語順・読点と語の修飾

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    資料紹介

    1.はじめに
     文章を読む際に「、(読点)」と語の順番は重要な役割を果たす。それらが不適切であると、文章は読みにくいだけではなく、その内容を誤解してしまうこともある。適切な位置にそれらがあるならば、正しい内容を容易に読み取ることができる。これは、語順・読点が語の修飾関係を支配しているのが原因である。
      このレポートでは、まず読点・語順と語の修飾関係を説明し、次に本多勝一「日本語の作文技術」をもとにして、どのような読点・語順が適切かを考察する。
    2.語順・読点と語の修飾関係
     いくつかの例によって、読点・語順と文の修飾関係について考える。まずは語順についての例をあげる。
    A1.荒々しいヒグマの巨大な体躯には全く似つかわしくないそろそろ北海道に冬が訪れようとするころに始める行動
    A2.荒々しいヒグマの冬に始める行動
    A3.荒々しいヒグマの行動
    この例において、A1は明らかに「荒々しい」のは「ヒグマ」である。A1において「行動」が荒々しいとする解釈は、可能ではあるが、不自然である。しかし、A1と同じ構造をもったA2だと、「荒々しい」が「行動」を修飾するという解釈は、A1ほど不自然ではなくなる。そして、A3ではその不自然さはさらに弱くなる。このことから、次の性質が考えられる。
    (1)修飾する語とされる語は、近いほど結びつく力が強くなる
     次に読点についての例をあげる。
    B1.荒々しいヒグマの巨大な体躯には全く似つかわしくない行動
    B2.荒々しい、ヒグマの巨大な体躯には全く似つかわしくない行動
    この例においては、B1は「荒々しい」のは「ヒグマ」で、B2は「荒々しい」のは「行動」と考えるのが自然である。B2において、「荒々しい」が直後の「ヒグマ」を修飾することはできない。読点をうつことによって、直前の語が遠く離れた語を修飾することになった。このことから、次の性質が考えられる。
    (2)読点は、「その直前の語が遠く離れた語を修飾する」ということを示す
    このように、読点・語順は語の修飾関係をコントロールしている。
    3.語順・読点の原則
     読点・語順は文の修飾関係に影響することがわかったが、どのような読点・語順が正しく・わかりやすく文章の内容を伝えるのか。構文的な立場で決定される語順に対して、本多勝一氏は「日本語の作文技術」の中で次のように主張している。
    (3)節を先に、句をあとに
    (4)長い修飾語ほど先に、短いほどあとに
    これらに関しては、次の例から明らかである。
       D1.白い服を着た男が我が家を訪ねてきたことを私は知っている。
       D2.私は白い服を着た男が我が家を訪ねてきたことを知っている。
       E1.次の曲がり角から三軒先にある赤い屋根のタバコ屋
       E2.赤い屋根の次の曲がり角から三軒先にあるタバコ屋
       E3.明日は雨だとこの地方の自然に長くなじんできた私は直感した。
       E4.この地方の自然に長くなじんできた私は明日は雨だと直感した。
                         (E3・E4は「日本語の作文技術」より)
    D1・D2はいずれも「白い服を着た男が我が家を訪ねてきたことを」という節と「私は」が、「知っている」を修飾する文である。E1・E2はいずれも「次の曲がり角から三軒先にある」という長い修飾語と「赤い屋根の」が、「タバコ屋」を修飾する文である。(3)(4)の原則に添うのはそれぞれD1・E1であり、抵抗なくその内容を理解できる。
    対してD2・E2は誤読を誘う文である。D2は「私は白い服を着た」で区切ってしまい、その先まで読み進

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    語学

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    1.はじめに
     文章を読む際に「、(読点)」と語の順番は重要な役割を果たす。それらが不適切であると、文章は読みにくいだけではなく、その内容を誤解してしまうこともある。適切な位置にそれらがあるならば、正しい内容を容易に読み取ることができる。これは、語順・読点が語の修飾関係を支配しているのが原因である。
      このレポートでは、まず読点・語順と語の修飾関係を説明し、次に本多勝一「日本語の作文技術」をもとにして、どのような読点・語順が適切かを考察する。
    2.語順・読点と語の修飾関係
     いくつかの例によって、読点・語順と文の修飾関係について考える。まずは語順についての例をあげる。
    A1.荒々しいヒグマの巨大な体躯には全く似つかわしくないそろそろ北海道に冬が訪れようとするころに始める行動
    A2.荒々しいヒグマの冬に始める行動
    A3.荒々しいヒグマの行動
    この例において、A1は明らかに「荒々しい」のは「ヒグマ」である。A1において「行動」が荒々しいとする解釈は、可能ではあるが、不自然である。しかし、A1と同じ構造をもったA2だと、「荒々しい」が「行動」を修飾するという解釈は、A1ほど不自然ではなく...

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