簿記の歴史
1.簿記の誕生
簿記の誕生には、「いつ、誰が」というはっきりとした記録はないようだ。紀元前20世紀頃のエジプトでは、素朴な形式の帳簿で記録が行われていたことが推定されている。貨幣もまだ使用されていなかった古代のエジプトでは、国家へ納められるものはすべて物財であり、労働の報酬もまた物財で支払われた。物財の納入と払出しは記録官により記録されていたという。
素朴な形式のものではあったが、最初に簿記を用いたのは中世における王侯貴族および教会であるといわれている。彼らは人民から多額の金銭や財貨を収納するとともに、これを種々の用途に支出した。この金銭財貨の収支事務を出納役に行わせたのである。
勘定記録という特有の記録計算技術は、13世紀ごろ、イタリアにおける金融業者のあいだで発達したと伝えられている。金銭の貸借関係の変動を備忘的に記録し、貸借関係について後日紛争が生じた場合に、その勘定記録により証明することができるからである。金融業で貸借関係の記録計算技術として考えだされた勘定記録の方法は、商人間の売買にともなって生じる掛貸借関係の記録方法としても次第に用いられるようになり、やがて...