「ペスタロッチーの教育学(直観の原理など)について考察せよ」
⇒ペスタロッチーの活躍した時代はスイスにとってもっとも多難な時代だった。彼はその時代にスイス国民の堕落と奴隷、貧困と不和の現状を直視して、人間性の救済と生活者としての自立と独立のために教育活動に立ちあがった。彼の教育学について考えると、まず人間をどう見ていたか、すなわち彼の人間観を問う必要がある。
彼は最初の著作である「隠者の夕暮」の冒頭で「玉座の上にあっても木の葉の屋根のや蔭に住まって同じ人間、その本質から見た人間、そもそも彼は何であるか」と述べている。ここでも明らかでありように、彼は人間は自然状態において平等であり、自由な存在としてうけとめている。同時に人間はその障害において「自由状態」にとどまるものではなく、成長とともに財産、権力、地位ならびに名誉を求める「社会的状態」の中に揺れ動き、我欲の虜となる。しかし人間自然の内奥には高貴神聖な品位の意識が秘められているので、やがて精神的道徳的目覚めを自覚し得るのである。これが「道徳的状態」である。混乱の時代に彼は人間の内在する可能性を信じ、「教育」こそ祖国のため、「道徳的精...