『「やまなし」の教材研究を行うとともに、事例(p.142-170)の児童の発言を考察しなさい。』
「やまなし」の教材研究
「やまなし」は、宮沢賢治が一九三二年に岩手毎日新聞で発表した作品である。宮沢賢治の数少ない生前発表作品のうちの一つである。序文に「小さな谷川の底を写した二枚の青い幻燈です」と書かれており、そのとおり、宮沢賢治が、文章という素材で作った淡く優しく美しい幻燈である。二匹の子蟹の兄弟が見る川の生き物の世界を描いたもので、晩春の五月と、初冬の十二月の二部で構成されている。二つの場面では、それぞれ美しい色や光、音などが、視覚的、絵画的に表現されている。それぞれの場面は、静止した映像ではなく、動物や植物、鉱物など自然界のあらゆるものが、確かな生命力を持って、あるいは、確かな存在感を持って生き生きと動いているかのようである。子蟹たちの他愛のない会話の中に、言葉使いや音感の楽しさを見出すことができる作品である。作品中には、「クラムボン」「イサド」などの独特な造語や「かぷかぷ」「もかもか」など擬音語や擬態語など、そして数々の美しい比喩表現など宮沢賢治ならではの表現が使われている。そし...