「集合行動の社会心理について論ぜよ。」
ル・ボンの群衆心理とは、個人の意識ではなく「集団的精神」によって支配され、そのような精神を体現した指導者に屈服している諸個人の集合体と考えられている。人々が、心理的群衆を構成していくと、それが存続していく限り1個の集団的精神が生じ、単一の存在を構成し群衆の心的一致の法則についてくる。人々は集団的精神のなかで、批判能力も個性も喪失し、無意識的性質が圧倒的になっていく。そして、暗示があらゆる個人にとって同一のものであるだけに、相互的に作用しあい、ますます強烈になっていき、いったん行動が起こされると周囲に感染していく。つまり群衆とは、既存の社会的諸関係、個人的諸関係が消滅し、人々は没個性化・同質化すると考えられる。これが群衆の本質的な特性だ。そして、この同質化メカニズムとして暗示性や匿名性などがあがる。この群衆こそ全ての集団の典型である。
ル・ボンの思想はアメリカ社会学における群集への見方をも相当程度に規定してきた。 ただし、アメリカでは群衆に関する研究は、集合行動といった社会学の1研究分野として行なわれていき、そこでは群集一般について考察されるより...