「風景」と「景観」の違い
「風景」「景観」という言葉は、通常よく見る文脈の上ではほぼ同意義の言葉として扱われていることが多いが、辞書の上では、二つは次のように区別されている。「景観」とは地理学的に客観的な、つまり大多数の人間が主観を入れず大差なく感じるような景。それに対して「風景」とは、身体的にとらえられる周囲の様子を主観的に構築し直した、心情や主観が含まれるとする絵画的ニュアンスが強い。われわれは普段、これらの違いを特別に意識して使い分けることは少ない。しかし、西洋文化における自然観に照らして考えてみると、現代使われているような美の対象としての自然という意味合いで「風景」が捉えられるようになるのは意外にもつい最近になってからのようだ。 18世紀以前のヨーロッパで用いられた自然に関する表現を観察してみると、自然景観が表現対象となりうるためには、自然は何らかの形で人為的にかかわらなければならなかったということに気づく。例えば、P・ガレーはフランスの24,5編の物語においての語彙を調査したが、彼によって研究された語彙のうち、60%が水に関係しているという。人間のあらゆる活動、または生存形...