中国の沙漠化

閲覧数2,875
ダウンロード数38
履歴確認

    • ページ数 : 12ページ
    • 全体公開

    資料紹介

    中国の沙漠化
    中国における沙漠化の定義
    沙漠化
    沙漠化とは生態学的な悪化の過程で経済的な生産が可能である土地が生産力が落ち、極端な場合には沙漠のような景観を呈し、そこに依存して発展して来た社会が成り立たなくなることである。
    IPCC(Intergovernmental Panel for Climatic Change, 気候変動に関する政府間パネル)の1995年の報告では、UNCED(United Nations Conference on Environment and Development, 環境と発展に関する国連会議)が1992年6月に採択した「乾燥、半乾燥、および乾燥した半湿潤地域における土地悪化で、気候変動や人間活動を含む種種の因子に原因がある現象」という定義を行った。
    中国語では沙漠化の他に荒漠化という語がある。荒漠とは、沙漠(砂沙漠と岩石沙漠)ばかりでなく、土壌・植生が貧弱なカルスト地域、海岸砂丘地域、塩が広く地表を覆っている地域などを含めた総称である。従って、ある土地がこのような地表に変化することを荒漠化と言う。英語のdesertを中国語では荒漠とも沙漠とも訳する。日本語の沙漠(本論文では「沙」の字を使う)が英語のdesertに対する語か、中国語の沙漠(すなわち荒漠の一部)に対応する語か、未だ定説はない。
    中国の沙漠化には2種類あり、一つ目は乾草原および荒漠草原を農業用に開墾した耕地が沙漠化へ発展する。中国科学院の自然区画工作委員会が決めた指標は次の通りである。すなわち、乾燥度Aは、A=E/r≒0.16Σt/rで求める。Eは可能蒸発量であるが、実際には経験的に0.16Σt(Σtは10℃以上の積算温度)を用いる。rは年降水量(mm)、そしてAが4.0以上の地域を"荒漠"、2.5~4.0を"荒漠草原"と言い、両者を総称して中国語では"干旱区"と呼ぶ。なお「荒漠」と「沙漠」の語の違いについては先に述べた。また1.5~2.5は"乾草原"と言い、"半干旱区"と呼ばれる。ここではその直訳として"乾燥区"と"半乾燥区"の語を使用する。2番目は固定砂丘(砂地)の開墾および薪用伐採、放牧などにより固定砂丘が流砂に変わることである。
    乾燥地・沙漠の区分と割合
    水条件によって、乾燥・半乾燥・半湿潤・湿潤地域に大きく4つに区分されます。中国の国土の52.5%が乾燥・半乾燥地(干総・半乾燥地区)で、西北部だけで30%を占め(1981年)、大部分が新彊吾爾(ウイグル)自治区、甘粛省、内モンゴル自治区に集中しています。
    沙漠の種類と分布割合
    沙漠を地域によって大きく区分しますと、、一般に西北部の白色沙漠(白褐色砂)、中東部の黄色沙漠(黄土高原付近の黄色砂)、南部の紅色沙漠(ラテライトの赤褐色砂)となります。
    沙漠は地表面の物体によって砂沙漠(砂の沙漠)、岩石沙漠、礫沙漠に区分されます。中国では石礫沙漠をゴビ沙漠、岩石・礫沙漠を石沙漠と呼び、また土(レス、細かい土粒子)でできた砂漠を土沙漠、塩の析出した沙漠を塩沙漠と呼びます。
    地域別の沙漠の分布割合は表3のとおりです。
    表3 砂沙漠とゴビ(石礫)沙漠の分布割合(治砂造林学編委会、1984)
    省・自治区 新彊 甘粛 青海 内蒙古 寧夏 陝西 吉林 遼寧 黒龍江 面積率(%) 55.6 5.3 5.8 31.3 0.5 0.9 0.3 0.1 0.2
    新彊吾爾(ウイグル)自治区をにおける砂沙漠面積は42.3万k㎡で、全国の砂沙漠面積の63%、新彊総面積の25%を占めています。新彊の沙漠分布割合を表4に示し

    資料の原本内容

    中国の沙漠化
    中国における沙漠化の定義
    沙漠化
    沙漠化とは生態学的な悪化の過程で経済的な生産が可能である土地が生産力が落ち、極端な場合には沙漠のような景観を呈し、そこに依存して発展して来た社会が成り立たなくなることである。
    IPCC(Intergovernmental Panel for Climatic Change, 気候変動に関する政府間パネル)の1995年の報告では、UNCED(United Nations Conference on Environment and Development, 環境と発展に関する国連会議)が1992年6月に採択した「乾燥、半乾燥、および乾燥した半湿潤地域における土地悪化で、気候変動や人間活動を含む種種の因子に原因がある現象」という定義を行った。
    中国語では沙漠化の他に荒漠化という語がある。荒漠とは、沙漠(砂沙漠と岩石沙漠)ばかりでなく、土壌・植生が貧弱なカルスト地域、海岸砂丘地域、塩が広く地表を覆っている地域などを含めた総称である。従って、ある土地がこのような地表に変化することを荒漠化と言う。英語のdesertを中国語では荒漠とも沙漠とも訳する。日本語の沙漠(本論文では「沙」の字を使う)が英語のdesertに対する語か、中国語の沙漠(すなわち荒漠の一部)に対応する語か、未だ定説はない。
    中国の沙漠化には2種類あり、一つ目は乾草原および荒漠草原を農業用に開墾した耕地が沙漠化へ発展する。中国科学院の自然区画工作委員会が決めた指標は次の通りである。すなわち、乾燥度Aは、A=E/r≒0.16Σt/rで求める。Eは可能蒸発量であるが、実際には経験的に0.16Σt(Σtは10℃以上の積算温度)を用いる。rは年降水量(mm)、そしてAが4.0以上の地域を"荒漠"、2.5~4.0を"荒漠草原"と言い、両者を総称して中国語では"干旱区"と呼ぶ。なお「荒漠」と「沙漠」の語の違いについては先に述べた。また1.5~2.5は"乾草原"と言い、"半干旱区"と呼ばれる。ここではその直訳として"乾燥区"と"半乾燥区"の語を使用する。2番目は固定砂丘(砂地)の開墾および薪用伐採、放牧などにより固定砂丘が流砂に変わることである。
    乾燥地・沙漠の区分と割合
    水条件によって、乾燥・半乾燥・半湿潤・湿潤地域に大きく4つに区分されます。中国の国土の52.5%が乾燥・半乾燥地(干総・半乾燥地区)で、西北部だけで30%を占め(1981年)、大部分が新彊吾爾(ウイグル)自治区、甘粛省、内モンゴル自治区に集中しています。
    沙漠の種類と分布割合
    沙漠を地域によって大きく区分しますと、、一般に西北部の白色沙漠(白褐色砂)、中東部の黄色沙漠(黄土高原付近の黄色砂)、南部の紅色沙漠(ラテライトの赤褐色砂)となります。
    沙漠は地表面の物体によって砂沙漠(砂の沙漠)、岩石沙漠、礫沙漠に区分されます。中国では石礫沙漠をゴビ沙漠、岩石・礫沙漠を石沙漠と呼び、また土(レス、細かい土粒子)でできた砂漠を土沙漠、塩の析出した沙漠を塩沙漠と呼びます。
    地域別の沙漠の分布割合は表3のとおりです。
    表3 砂沙漠とゴビ(石礫)沙漠の分布割合(治砂造林学編委会、1984)
    省・自治区 新彊 甘粛 青海 内蒙古 寧夏 陝西 吉林 遼寧 黒龍江 面積率(%) 55.6 5.3 5.8 31.3 0.5 0.9 0.3 0.1 0.2
    新彊吾爾(ウイグル)自治区をにおける砂沙漠面積は42.3万k㎡で、全国の砂沙漠面積の63%、新彊総面積の25%を占めています。新彊の沙漠分布割合を表4に示します。新彊では砂沙漠は58.9%、ゴビ沙漠が41.1%です。
    表4 新彊の沙漠の分布と面積(1993年)
    沙漠名 分布地区 面積(k㎡) (タクラマカン) 塔里木(タリム)盆地 337600 (グルバントングト) 准葛爾(ジュンガル)盆地 48800 (クムタグ) 新彊東部地区 22800 (ウソ) 艾比(アイビ)湖の東・南東部 5513 (クルクリ) 阿爾金(アルツン)山間部 2848 (シャンシャン) (トルファン)盆地 2500 (アクベレクム) (イェンチ)盆地 674 (ホチェン)(タクルモホル沙漠) 伊犁(イリ)地区 485 (フーハイ)・(ウルンダ) 福海・富蘊(フユン)地区 628 布爾津(ブルジン)・哈巴河(ハバハ)・吉木乃(ジムナイ) エリチス河の本支流両側 1000 合計 新彊全域 422848
    沙漠化について
    沙漠化は生態学的な悪化の過程で、経済的な生産が可能である土地が、生産力が落ち、極端な場合には沙漠のような景観を呈し、そこに依存して発展して来た社会が成り立たなくなることを言います。IPCC(Intergovermental Panel for Climatic Change, 気候変動に関する政府間パネル)の1995年の報告では、UNCED(United Nations Conference on Environment and Development, 環境と発展に関する国連会議)が1992年6月に採択した「乾燥、半乾燥、および乾燥した半湿潤地域における土地悪化で、気候変動や人間活動を含む種種の因子に原因がある現象」という定義をとっています。
    そして、沙漠化は降水量が少なく、乾期が長く、干ばつの常習地帯で、侵食・堆積の激しい地表面と貧弱な土壌層をもち、植生がまばらな生態系の地域でしばしば発生します。
    沙漠化の指標は蒸発散量(pet)と降水量(p)の比で表1のように表わされます。大陸別にみた諸地域を含むそれぞれの気候地域の面積は表2のとおりです。この表を見ると、世界中では1300万k㎡の陸地面積が「本当の沙漠」か「沙漠化の対象となる地域」です。
    表1 極端な乾燥地域から半湿潤地域に至るp/petの値
    p/pet 地域 <0.05 極端な乾燥地域(本当の気候的沙漠) 0.05~0.20 乾燥地域(沙漠化の対象となる地域) 0.20~0.45 半乾燥地域(沙漠化の対象となる地域) 0.45~0.70 半湿潤地域(沙漠化の対象となる地域)
    表2 世界の乾燥地(×1000k㎡)の大陸別の分布(IPCC,1995)
    気候地域 アフリカ アジア オーストラリア ヨーロッパ 北アメリカ 南アメリカ 合計 寒冷 0.0 1082.5 0.0 27.9 616.9 37.7 1765.0 湿潤 1007.6 1224.3 218.9 622.9 838.5 1188.1 5100.4 乾燥した湿潤 268.7 352.7 51.3 183.5 231.5 207.0 1294.7 半乾燥 513.8 693.4 309.0 105.2 419.5 264.5 2305.3 乾燥 503.5 625.7 303.0 11.0 81.5 44.5 1569.2 極端な乾燥 672.0 277.3 0.0 0.0 3.1 25.7 978.1 合計 2965.6 4256.0 882.2 950.5 2190.5 1767.5 13012.7
    中国語では沙漠化の他に荒漠化という語があります。荒漠とは、沙漠(砂沙漠と岩石沙漠)ばかりでなく、土壌・植生が貧弱なカルスト地域、海岸砂丘地域、塩が広く地表を覆っている地域などを含めた総称です。従って、ある土地がこのような地表に変化することを荒漠化と言います。英語のdesertを中国語では荒漠とも沙漠とも訳します。日本語の沙漠が英語のdesertに対する語か、中国語の沙漠(すなわち荒漠の一部)に対応する語か、未だ定説はありません。
    乾燥した荒漠地域における沙漠化
    主に狼山(ランシャン)―賀蘭山(ホーランシャン)―烏鞘嶺(ウーランシャン)の西の広大な乾燥した荒漠地域に分布し、一部は大砂漠の周辺地に集中的に分布します。例えば、タクラマカン沙漠南部および北部周辺の古代シルクロード沿線、塔里木河下流、弱水(ルオシュイ)下流および一部のオアシスの周辺(河西回廊のオアシス周辺など)であり、北方地区の沙漠化地域の30.7%を占めます。その発生、進行は主に内陸河川の変遷、上中流域における水資源の過剰利用などと関連し、同時にオアシスの周辺地における過度の樹木伐採などにより、植生を破壊し、固定・半固定砂丘を活性化させてしまったことや、流砂を起こさせたことと関連しています。
    この他、風の作用によって、大砂漠の一部では流動沙漠が移動してオアシスに進入し、沙漠が拡大する場合や砂丘前面の砂礫平原上の荒漠草原に過放牧により沙漠地域が生まれます。これも乾燥した荒漠地帯の沙漠化過程の一つの要因で、沙漠化形成のもう一つの形式です。乾燥した荒漠地域の沙漠化地域はオアシス付近あるいは内陸河川の下流域に分布で、分布形態はそれぞれ関連を持たず、小片上に進行します(図4-4)。これは半乾燥地域の沙漠化地域における地域的進行とは異なります。言い換えれば、乾燥した荒漠地域の沙漠化地域は、沙漠の周縁にあるオアシスを散り囲む形で、沙漠内部の河川下流で一部の水源が比較的得にくくなる地域へと発展します。このため、景観上、低木林砂丘と三日月砂丘、砂丘列が交互する特徴を呈し、タクラマカン沙漠の南部の皮山(ピシャン)、墨玉(モーユイ)、策勒(チーラ)、洛浦(ルオプー)、干田(ユーティエン)、民豊(ミンフォン)などのオアシスの北部はその典型的な例です。
    砂漠化に至る過程で作用する人為的要因
    農畜産業経営方式の変化
    乾燥農業限界地の過耕作
    過開墾・過放牧・過伐採・過採薪
    上・中流河川水の過消費
    下流・末端河川水の...

    コメント0件

    コメント追加

    コメントを書込むには会員登録するか、すでに会員の方はログインしてください。