ハミルトン形式にも使える
当然のことなんだけどね。
正準変換の準備
ここまで、変分原理からラグランジュ方程式を導けることを見てきたわけだが、それだけではなく、同じ原理からハミルトンの正準方程式を導くことも出来ることを示そう。 これは大して本質的な話ではないので説明を省いてしまおうかとも思ったくらいなのだが、こういうことも出来るのだということは知っておくべきだし、何より、次の正準変換の説明を簡単に済ませるための道具として大変役立つのである。
正準方程式を導く
ラグランジュ方程式は
と表される作用 I が停留点を取るという条件から求められた。 これをハミルトン形式の表現に書き換えるには、 の関係式を使って
と置いて、変分原理を使ってやればいい。 すなわち以前やったように、初期状態 A と終状態 B を特定してやって、その途中で運動量 p(t) と 座標 q(t) が実際に選ぶ経路からの僅かな変化を δp と δq で表してやるわけだが、やはり以前と同じように
という条件を課してやる。 この時、積分内の式、 の微小変化 はどう表せるだろうか? これも以前計算したのと同じで、普通の微分のように計算してやればいい。
よって、
となるのであるが、これを δp と δq でくくり出してやりたい。 δp についてはこのままでも問題ないのだが、積分内の第1項目の δq にはドットがついているのでこのままではまとめられない。 この解決法も以前と同じであって、部分積分を使って
のように変形してしまえば、初めに課しておいた条件によって第1項が消えて、
となる。 こうして、
のようにまとめることが出来る。 ここで、δI/δp = 0 , δI/δq = 0 が成り立つには、それぞれの括弧内が0であることが必要であって、これはハミルトンの正準方程式そのものである、というわけだ。
騙されてはいけない
ラグランジュ形式の方程式もハミルトン形式の方程式も、変分原理という統一的な表現だけから導けてしまうというので、ちょっとした感動を覚えるかもしれない。 実際にこの理由によってこれが力学の根本的な原理だと広く認められるに至っている。
しかし、ラグランジュ形式からハミルトン形式への移行の本質はルジャンドル変換にあるのであって、ルジャンドル変換の本質は という変形にあるのであった。
変分原理からラグランジュ方程式を導けたわけだから、これに という関係式を代入しさえすれば、正準方程式が導かれてくるのはある意味、当然なのではなかろうか? この変形自体は変分原理とは関係ないわけだし。
数学の見かけの美しさに惑わされるべきではない。 しかしうまく使ってやれば非常に役立つ概念ではあると思う。
ついでだが大事な話
前からいつ話そうかと気になっていたのだが、ここで説明しておくのがちょうどいいだろう。 上では分かり易いようにと思って、 δI/δp = 0 と δI/δq = 0 という2つの条件を分けて書いたが、実はこれは δI = 0 という一つの式で言い表せてしまうのだ。
全微分の式を思い出してみるといいだろう。 x と y の関数 f ( x, y ) の全微分は、 df = a dx + b dy と表せるが、df = 0 である条件は a = b = 0 である。 ここで、 a = df/dx, b = df/dy であった。 つまり、同じことだ。
このことは以前にラグランジュ方程式を導いた時にも当てはまる。 すなわち、変分原理は全て 「 」 というシンプルなたった一つの式で書き表されてしまうことになるのだ!
これでもこの数学表現の美しさに抵抗できるだろうか!? さあ、変分原理に忠誠を誓うのだ!
資料提供先→ http://homepage2.nifty.com/eman/analytic/apply.html