単位系改造計画

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    単位系改造計画
    これからは「コスモ単位系」を使いましょう。(笑)
    面倒くさい物理定数を全て1にするような単位系を導入しよう
     物理には色々な定数が出てきて計算が面倒だと思ったことはないだろうか? 多分、あると思うのだ。 いっそのこと「メートル」や「キログラム」「秒」などの単位を使うのをやめて、代表的な物理定数を全て1にするような単位系を取ることは出来ないだろうか。
     実際それは可能である。 素粒子論の理論計算では、簡単のためによく光速度やプランク定数を1と置いた単位系を使う。 具体的な数字を入れて計算するときには、単位の次元が合うようにそれらの定数を入れ直して使うのである。 しかし普段の生活からそれらの定数が1となるような単位を使って慣れ親しんでいればそのような手間も省けるのではないだろうか?
     しかし少し考えてみれば分かることだが、とても実用的ではない。 真っ先にそのことに気付いて面倒くさくなって途中で考えるのをやめた人もいることであろう。 あるいは、どう考えたらいいのか分からないという人もいると思う。  ここではそういう人たちに代わって、そういう単位系が実際どういうものになるかについて考えてみることにしよう。
    現在使っている単位系の根拠は?
     計算に入る前に、我々が現在使っている単位系について考えてみたい。我々が慣れ親しんでいる単位「メートル」「キログラム」「秒」には一体どのような根拠があると言うのだろうか?
     今でこそ光の速さを基準に 「光が真空中を299792458分の1秒の間に進む距離を1mとする」 と定義されてはいるものの、この「299792458分の1秒」というのは特に根拠がないのであって、それ以前にあった1メートルの定義に合うように定められただけのことである。(こうやって1mを定義してあるから、光の速さが2.99792458*10^8m/sになるのは当然なのだなぁ)それで、もともとの1メートルの定義と言えば、 「地球の子午線の4000万分の1を1メートルとする」 というものである。 つまり、地球の赤道からまっすぐ北極までの道のりを1万キロメートルと決めたいがためにそうしたのである。
     また、時間について言えば、今でこそセシウム原子から出る光の周期を使って定義されているが、これも我々の日常に合うように基準を調整しただけであって、元の意味は、地球が1回自転する時間を24で割り、さらに60で割り、もう一度60で割った時間を1秒としているだけである。
     重さについても、国際キログラム原器なんてものがあるらしいが、元はといえば、1リットルの水の重さである。
     こういう宇宙の片田舎にある惑星の大きさなどを基準にした単位を使っているのでは、王様のひじから指先までの長さを1キュビトとして使っていた古代エジプトとやっていることは大差ない。
     これからは宇宙時代なのだから、全宇宙共通の尺度をもって長さ、重さ、時間の単位を決めようではないか。 独自の文化を見直すべき時代、とか言われたら元も子もないが。
    新しい単位
     さて、新しい単位の名称を決める必要がある。 混乱がないように今までと全く違う名称を導入するといいのだが憶えにくいという欠点がある。 本格導入が決定したのならともかく、読者は、こんな一時的な記事のためにわざわざファンタジー小説に出てくるような聞き慣れない単位の名称を憶えるのも嫌だろう。
     そこで妙案があるのだが、松本零士先生の作品「銀河鉄道999」で機関車の推力の設定に使われていた単位「コスモ馬力」(なんじゃそりゃ?)に倣って、 「

    資料の原本内容

    単位系改造計画
    これからは「コスモ単位系」を使いましょう。(笑)
    面倒くさい物理定数を全て1にするような単位系を導入しよう
     物理には色々な定数が出てきて計算が面倒だと思ったことはないだろうか? 多分、あると思うのだ。 いっそのこと「メートル」や「キログラム」「秒」などの単位を使うのをやめて、代表的な物理定数を全て1にするような単位系を取ることは出来ないだろうか。
     実際それは可能である。 素粒子論の理論計算では、簡単のためによく光速度やプランク定数を1と置いた単位系を使う。 具体的な数字を入れて計算するときには、単位の次元が合うようにそれらの定数を入れ直して使うのである。 しかし普段の生活からそれらの定数が1となるような単位を使って慣れ親しんでいればそのような手間も省けるのではないだろうか?
     しかし少し考えてみれば分かることだが、とても実用的ではない。 真っ先にそのことに気付いて面倒くさくなって途中で考えるのをやめた人もいることであろう。 あるいは、どう考えたらいいのか分からないという人もいると思う。  ここではそういう人たちに代わって、そういう単位系が実際どういうものになるかについて考えてみることにしよう。
    現在使っている単位系の根拠は?
     計算に入る前に、我々が現在使っている単位系について考えてみたい。我々が慣れ親しんでいる単位「メートル」「キログラム」「秒」には一体どのような根拠があると言うのだろうか?
     今でこそ光の速さを基準に 「光が真空中を299792458分の1秒の間に進む距離を1mとする」 と定義されてはいるものの、この「299792458分の1秒」というのは特に根拠がないのであって、それ以前にあった1メートルの定義に合うように定められただけのことである。(こうやって1mを定義してあるから、光の速さが2.99792458*10^8m/sになるのは当然なのだなぁ)それで、もともとの1メートルの定義と言えば、 「地球の子午線の4000万分の1を1メートルとする」 というものである。 つまり、地球の赤道からまっすぐ北極までの道のりを1万キロメートルと決めたいがためにそうしたのである。
     また、時間について言えば、今でこそセシウム原子から出る光の周期を使って定義されているが、これも我々の日常に合うように基準を調整しただけであって、元の意味は、地球が1回自転する時間を24で割り、さらに60で割り、もう一度60で割った時間を1秒としているだけである。
     重さについても、国際キログラム原器なんてものがあるらしいが、元はといえば、1リットルの水の重さである。
     こういう宇宙の片田舎にある惑星の大きさなどを基準にした単位を使っているのでは、王様のひじから指先までの長さを1キュビトとして使っていた古代エジプトとやっていることは大差ない。
     これからは宇宙時代なのだから、全宇宙共通の尺度をもって長さ、重さ、時間の単位を決めようではないか。 独自の文化を見直すべき時代、とか言われたら元も子もないが。
    新しい単位
     さて、新しい単位の名称を決める必要がある。 混乱がないように今までと全く違う名称を導入するといいのだが憶えにくいという欠点がある。 本格導入が決定したのならともかく、読者は、こんな一時的な記事のためにわざわざファンタジー小説に出てくるような聞き慣れない単位の名称を憶えるのも嫌だろう。
     そこで妙案があるのだが、松本零士先生の作品「銀河鉄道999」で機関車の推力の設定に使われていた単位「コスモ馬力」(なんじゃそりゃ?)に倣って、 「コスモメートル」「コスモグラム」「コスモ時間」 なんてのを使うことにしよう。 これなら、わざわざ名称を考えなくてもよいし、何だかカッコいいではないか。
    まず基本はコスモ速度から
     宇宙全体で一定のものを基準にした方がいい。 例えば、光速度。 これからは、「コスモ速度」を使ってほしい。 光速が「1コスモ速度」である。 車のスピードメーターもこれに書き直してもらいたい。 野球の投球速度も「コスモ速度」を使うようにお勧めする。 「メートル毎秒」や「時速○キロ」「時速○マイル」などという田舎の単位は今後なるべく使わないようにお願いしたい。 ポンドやヤードは論外である。
     よく使う速度とコスモ単位の換算表を下に用意しておいたので参考にしてもらいたい。
    いなか単位 コスモ速度 光速度 1 地球の公転速度(秒速30Km) ~1 * 10-4 マッハ1 1.1 * 10-6 旅客機 7.4 * 10-7 高速道路(時速100キロ) 9.3 * 10-8 一般道(時速60キロ) 5.5 * 10-8 徒歩(時速4キロ) 3.7 * 10-9 1 m/s 3.3 * 10-9 1 km/h 9.3 * 10-10
     時速1km は、およそ1 ナノ・コスモ速度であると憶えれば、今までとほとんど同じ感覚で使えるだろう。
    他に何を基準に決めるか?
     光速度の他にはどんな定数を1にしたらいいだろうか? プランク定数、真空の透磁率、真空の誘電率、万有引力定数、ボルツマン定数、それに素電荷、つまり電子の電荷などがある。 それくらいだろうか? 電子などの質量は全宇宙で変わらないかもしれないが、特に「電子」を選ぶ理由が見当たらない。 別に陽子でもいいのである。 電荷のように「素質量」とも言うべき基本となる質量があれば別だが、そのようなものは見つかっていないようだ。 重力定数は果たして一定だろうか、宇宙の膨張とともに変化しているのではないかという議論もあるが疑いだすときりがない。 他の定数についても本当に一定だろうかというような話はある。
     ところが、ここで別の大きな問題が出てくる。 ここに挙げた定数を全て同時に1に出来るわけではないのだ。 数に制限がある。 なぜなら、我々の使っている物理の基本単位は、「長さ」「質量」「時間」と、もう一つ、電磁気学の分野の「アンペア」の合計4つであって、今回やろうとしている事はこれらの4つの単位のスケールを変更することによってうまい具合に全ての定数を1にするような解を求めることに他ならない。 つまり動かせる変数は4つだけであって、この解を求めるためには条件は4つしか入れられないのである。 つまり、4つの物理定数しか1にすることができないというわけだ。 ところがすでに7つの物理定数が候補として挙がっている。 どれかの物理定数を1にするのをあきらめなければならない。
     しかし、条件はもう少しゆるい。 すでに光速を1とすることは決まっているので、真空の透磁率と真空の誘電率のどちらか一方を1にするだけで、もう一つは自動的に1になる。 つまり、条件は減らせるのだ。 さらにボルツマン定数は温度とエネルギーの間の関係を表す定数なので、温度のスケールをいじってやることで1に出来る。 これで犠牲になる定数は1つだけになった。 どれを選んで犠牲にするべきだろうか? ここは意見が分かれるところだろうと思う。
    犠牲になる定数はどれか
     例えば、万有引力定数はあまり使わないので引き下がってもらって構わない気がする。 しかし電気力や磁力の定数である誘電率や透磁率は1にしてもらっているのに同じクーロン型の万有引力定数を別扱いするのは気持ちが悪い。 それに万有引力定数はあまり使わないと言っても一般相対論でも値が変わらずに出てくる大切な定数なのである。 誘電率と透磁率はどちらかを変えるともう一方も変化させないといけないのでこいつらは両方1にしておいてやりたい。 そこで、素電荷を犠牲にすることにした。 これはとてももったいないことではあるが、重力の荷量である質量や、磁力の荷量である磁荷を定数の基準として用いなかったので電気力の荷量である電荷も同じ扱いをするべきではないかという考えである。
    では計算を始めよう
     計算はそんなに難しくはない。 まず、
    1メートル  =  L コスモメートル 1秒  =  T コスモ時間 1キログラム  =  W コスモグラム と置く。
     1メートルを1秒で割れば、それは1コスモ速度の1/cになるわけだから、
    L/T = 1/c   ・・・・・(1)
     1(J・秒)は角運動量の次元だが、プランク定数を単位にすると1/hなので、
    WL2/T = 1/h   ・・・・・(2)
     重力定数も同じように考えて、
    L3/WT 2 = 1/G   ・・・・・(3)
    (2) (3) の連立方程式を解くことにより、それぞれ、
    L  =   √(c3/hG)  =  2.47 * 1034 T  =   √(c5/hG)  =  7.40 * 1042 W  =   √(G/hc)  =  1.83 * 107 と求められる。
    ******************************************
     さらに、
    1アンペア = I コスモアンペア
    と置いてやることにより、電流間に働く力の公式から、
    I  =  √(μ0WL/T 2)  =  √(μ0G/c4)  =  1.02 * 10-25 と求められる。
    ******************************************
    また、ボルツマン定数が1になるように設定した「コスモケルビン」を決めよう。  1ケルビンはk(ボルツマン定数)ジュールに相当する。 すなわち kWL2/T 2コスモジュールに相当する。 1コスモジュールに相当する温度が1コスモケルビンなので、
    1ケルビン  =  kWL2/T 2 コスモケルビン...

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