本研究では、第一に、中国都市部における「空巣老人」の概要をまとめる。第二に、中国における高齢者のソーシャルサポート研究を概観し、都市部「空巣老人」のソーシャルサポートの特徴をまとめる。第三に、中国でアンケート調査を行い、中国都市部における「空巣老人」が持つソーシャルサポートについて実証研究を行う。調査の結果を分析する。第四に、中国南寧市での現地調査で得た資料の分析を通じて、都市部「空巣老人」が持つソーシャルサポートの存在する問題点を検討する上で、今後「空巣老人」に対するソーシャルサポートの方向性を見いだす展望を行う。
中国都市部における「空巣老人」の
ソーシャルサポートに関する研究
はじめに
ソーシャルサポート(social support、社会的支援)は、社会関係の援助的機能に関わる概念としてとらえる。ソーシャルサポートに関する標準的な定義はないが、「他者との相互作用を通じて個人の基本的社会的欲求が満足される程度」¹⁾、「個人や集団との公式・非公式な接触を通じて受け取る安心感、援助、情報」²⁾といった定義が知られている。ソーシャルサポート研究は、アメリカの疫学者でもあり医者でもあるCassel(1974)と精神医学者Caplan(1974)によって先駆的に研究された。CasselとCaplanは、ソーシャルサポートが人間の健康や幸福に肯定的な影響をもたらすことを明らかにした。その機能として、ストレスの緩働や適応の向上など、心理的なメリットが注目されている。一方、中国の高齢者化が世界にも注目され始めている。その中で、とりわ
、中国の「空巣老人」³⁾が近年来増加している。中国では独居老人の家が、社会学者に「空巣」と称されている。但し、このままだと日本では「泥棒」家庭となるが、英語のe...