エスニックコミュニティ―公的関心の欠如
移民社会のアメリカは、さまざまな人種・民族の集団がエスニック・コミュニティを形成している。エスニック・コミュニティは、相互扶助的な役割を担い、新しい移民を包摂する機能を果たしている。しかし、一方でエスニック・コミュニティは外の世界への無関心、ひいては公への無関心につながる側面はないだろうか。それでは以下、「新々移民」である、ヒスパニック系(*1)やアジア系である中国系、韓国系のエスニック・コミュニティを例にエスニック・コミュニティの実態を示し、次に、アメリカをめぐるビジョンの変遷、そして、それと連動する六〇年代以降から現代までの社会意識の変遷を概観していくことを通じてエスニック・コミュニティの外部への「無関心」を明らかにしていく。
一九六五年、ヨーロッパ系に偏っていた国別移民割当法の廃止を契機にして多様な人種・民族がアメリカに流入した。そして、八〇年代以降はラテンアメリカ、アジアからの移民が急増した。ヒスパニック系移民の多くは南部のカリフォルニア、テキサス、ニューメキシコに居住し、コミュニティを形成した。アジア系である中国系はニュー...