憲法論文答案練習
~地方自治保障の法的性格~
【問題】
地方自治の法的性格について論ぜよ
【考え方】
1)固有権説
・・・近代の自然権思想を地方公共団体にも適用する「地方権」思想等を根拠として、憲法による地方自治の保障は、地方公共団体が憲法以前において有する固有の権能を保障したものであるとする見解。
2)承認説
・・・地方自治といってもその内容は不断に流動し、一定の不動な内容を持つものではないこと等を根拠として、憲法第8章の規定は地方自治の一応の承認または許容以上の意味を持つものではないとする見解。
3)制度的保障説
・・・憲法は、立憲民主政の維持の観点から、その統治機構の不可欠の一部として地方自治制を捉えていること、他方、国家に帰属する主権の単一不可分性からして固有の自治権は認めがたいこと等を根拠として、憲法は地方自治を民主政に欠くことのできない公の制度として保障し、歴史的、理念的に確立された地方自治の本質的内容を立法によって侵害してはならないものであるとする見解。
【答案例】
憲法第8章が規定する地方自治の保障については、その法的性格をどのように考えるべきか。
この点については、それを地方公共団体が憲法以前において有する固有の権能を保障したものである固有権説がある。しかしながら、わが国では固有権説を裏付ける歴史的伝統は存しない。主権の単一不可分性からしても、かかる見解には疑問がある。そこで、憲法第8章の規定は、地方自治を一応承認または許容する以上の意味をもつものではないとする見解が出てくる(承認説)。しかしながら、それでは、地方自治がどのような形態をとるかは、国家の立法政策により決定されることになり、憲法が特に1つの章を設けて地方自治の保障を図った意義が失われることになりかねない。
むしろ、憲法が地方自治をもって立憲民主政の維持という観点からその統治構造の不可欠の一部として地方自治制を設けていると考えられることからすれば、憲法における地方自治の保障は、地方公共団体の自治行政を立憲民主政に欠くことのできない公の制度として保障し、歴史的・理念的に確立された地方自治の本質的内容を立法により侵害してはならないとするものである(制度的保障説)と考えるべきである。
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