司法試験・租税法の論証マニュアルを作成(定義や問題提起が中心)。作成者司法試験合格時まで作成・使用していました。
予備試験(近時・実施される選択科目)の租税法の論証づくりにも参考になるかと思います。
租税法 重要論点・論証集
<総論>
課税要件
論点
論証
備考
納税義務者
納税義務の主体をいう
★ 担税者…経済的意味で租税を実際に負担する者
① 居住者(2①ⅲ)
ⅰ 非永住者 日本国籍× かつ 期間×
ⅱ 永住者
② 非居住者(2①ⅴ)
課税物件
課税の対象となる物・行為・事実をいう
人的帰属
納税義務者と課税物件の結びつきをいう
課税標準
物・行為・事実を数値化したものをいう
税率
課税標準に対して適用される比率
基本原則
論点
論証
備考
租税法律主義(憲84)
①課税要件法定主義、②課税要件明確主義
合法性原則
法律に適合しなければならない
・平等原則の派生 ・和解不可 ・信頼保護の原則
手続保障原則
遡及立法禁止原則
判例で、制約あり、制約の許容性のフレームで検討し、合憲とする事案がある
<所得税法>
所得
論点
論証
備考
所得(7)の意義
(包括的所得概念)
所得税法は、一時所得(34条)・雑所得(35条)をも課税対象とし、36条1項で「収入」の原因を限定していない。そのため、所得(7条)とは、新たな経済的価値の流入をいい、その流入の原因は問わないと解すべきである(包括的所得概念)。
★ 所得
=期中純資産増加額
+期中消費額
★借入金自体は所得でない
違法所得
包括的所得概念からすると、経済的価値の流入原因は問われない以上、違法な原因による収入も所得を構成する。
★ 反対説として公序の理論
← 具体的立法で対処可能
★ 違法所得は権利確定できないので、管理支配基準
課税単位
原則
個人単位課税
二分二乗方式
夫婦の所得を一旦合計し、その半分(2分)に累進税率表(89①)を適用し、得られた税額を二倍(2乗)する
★ 結婚罰の回避
判例 個人単位課税でも違憲でない
非課税所得
論点
論証
備考
4号
(1) 本来給与所得に当たることの論証
(2) 規定の指摘、「通常必要な費用」
(3) 給与所得者の受ける付随的給付のうち、職務の遂行上において通常必要となる給付は使用者の便宜のための給付であり、被用者が自由に処分できる所得としての性質を有しない。そのため、上記規定は非課税としている。
⇒基準(主として職務に従事するために必要な給付)
★フリンジベネフィット参照。
9号
「生活の用に供する」動産
同号の趣旨は、生活用資産からは通常譲渡益が生じず、また生じたとしても少額であり、担税力の観点から課税するのは妥当でない。
★ 9条2項も参照
★ 判例
マイカーの該当性
15号(学資金)
「学資」 小~大に限られるわけではない。 専門
★ 括弧書きに注意
16号(損害賠償)
(1) ~条、施行令30条1が…非課税とするのは、これらの金員が受領した納税者の心身財産に受けた損失を補てんする性質のものであり、原則納税者の利益にならないからである。
(2) そのため、…とは、納税者に損害が現実に生じ、生じることが確実に見込まれ、かつ、その補填のために支払われるものに限られる。 ⇒ 実損か否か。
★マンション承諾料事件
民法709条の故意・過失を厳密に充たすことまでは要求していない。
★「その他」
☛ 並列!
17号(相続・保険)
(1)~17号の趣旨は、相続税・贈与税との二重課税を防止することにある。
(2)二重課税にあたるかは実質的にみて、経済的価値を基準とすべきである。
⇒年金 →経済的同一性・・・現在価値相当額
異なる見解
法的にみる
⇒年金受給権vs支分権
論点
論証
備考
帰属所得
包括的所得概念の論証。
もっとも、自家消費のような、自己の労働力・資産により生じ、市場を通さずに得られた経済的価値は、所法39条など法律の規定がない限り、課税対象にならないと解すべきである(帰属所得)。なぜなら、帰属所得も経済的価値を享受しているので、包括的所得概念からすると所得にあたることになるが、所得税法は、所得の基準を「収入」(36条1項)としているのに対し、帰属所得の場合、現実には収入を得ていないのに所得があるとするのは不自然だからである。
(また、究極的には余暇も帰属所得に含まれうるので、その範囲が不明確だからである。)
★ H29司より
適用条文の検討ミスしない!周りの条文もさらっとみる。
39・40条など。
論点
論証
備考
パススルー課税
(1)組合は「人格のない社団等」に該当しないため、所・法2条8号、所4条 法3条により、納税義務者とならない。
(2) 組合(任意・匿名)の実体法上の法律関係を説明 して(民法・商法)、構成員個人に課税されることを説明。
(3)任意組合の場合
ア条文指摘・少なくとも共有(合有、民668)を指摘する。
イアのような法的構造からすると、組合活動による所得は組合員に直接帰属する(パススルー課税)。
(4)匿名組合の場合
ア 匿名組合の性質説明 営業者と出資者の分離が原則と示す。原則より、出資者による投資は出資の配当としての性質を有するとして、(事業)雑所得になる。
イ ただし、例外的に、「当該契約において、匿名組合員に営業者の営む事業にかかる重要な意思決定に関与するなどの権限が付与されている場合には、共同事業を営んでいるといえるので、匿名組合員の受領した利益は、利益の分配としての性質を有し、営業者段階の所得の性質が維持される。→具体的検討
★ りんご生産組合事件規範要約
…「組合から」金員の支払を受けた場合
「組合の事業(27条)から生じた利益の分配にあたるか、給与等の支払(28条)に該当するか」は、「当該支払いの原因となった法律関係についての組合・組合員の意思・認識、労務提供や支払いの具体的態様(当てはめ事項)に照らして、具体的実質的に」検討
論点
論証
備考
実質的所得者課税の原則(12条)
実質的所得者課税の原則(12条)につき、「事業(資産)」「から生ずる収益」は、経済上の帰属ではなく、法律上の真の権利者が「享受」すると解すべきである(法律的帰属説)
・文言(名義人など)
・経済的帰属説よりも法的安定性に優れる
・経済的帰属の把握は困難
「事業」「から生ずる」場合
誰の勤労による所得かではなく、収入が誰に帰属するかという観点から検討すべきである。
家族経営の場合
所得税法は、個人単位課税を原則とするところ、家族で共同事業をする場合、家族間で所得分割がなされると、超過累進課税により、他の納税者との公平が害される。
よって、ある事業による収入は、勤労をした者ではなく、その経営主体に帰属したと解すべきである。そして、従来父親が単独経営していた事業に新たにその子が加わった場合、「特段の事情」がない限り、父親が経営主体で、子が従業員として加わったとみるべきである。
(1)前提の確認
(2)「特段の事情」の事実・評価
百選
「資産」「から生ずる」場合?
→①まず、資産性所得か、資産勤労結合所得か性質を確認する。
②-1 勤労性ありなら、上記同様収入の帰属を実質的に検討する(たぶんこちらになる方が多いと思う)
②-2 資産性なら、法律上の帰属で判断
所得区分
不動産所得
論点
論証
備考
意義
「不動産等」の「貸付け」による所得(26①)とは、賃貸人が「不動産等」を賃借人に使用収益させることにより得られる利益をいう。
★ 資産性所得
検討順序
1 26①は事業所得と譲渡所得を除外している(同項括弧書き)ので、まず、(事業)譲渡所得にあたるか検討する!
2 譲渡所得につき、33①括弧書きで、「・・・長期間使用させる行為」かつ「政令で定めるもの」は譲渡所得となる。→令79条
ただし、不動産等を利用させることが長期にわたり、その対価を一括で受領する場合、実質的には資産が譲渡されたと評価し得るものの、実質的な資産の譲渡があったかは明確でないので、33①括弧書きは、政令に該当する場合に限り譲渡所得として扱うことを定めたと解すべきである。→該当性を文言に忠実に検討。
★ サンヨウメリヤス事件、連担建築物事件
事業所得
論点
論証
備考
定義
①自己の危険と計算に基づき、②営利性・有償性をもって、かつ、③反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得をいう。
給与所得との区別
両方の定義を併記。
(基準)両者のいずれかにあたるかは、①自己の危険と計算において営まれているか、②時間的・場所的拘束の有無、③その他の考慮要素に照らして検討する。
不動産所得・区別
不動産所得 資産性所得
事業所得 資産勤労結合型所得
→ 人的役務の提供を伴っていれば事業
・食事提供の有無
・規模(マンションなら10部屋~、家屋なら5棟~)
★条文構造
事業から検討する
譲渡所得・区別
前提:27①かっこ書きで譲渡所得除外→33該当性
①33条2項該当の有無
「たな卸資産(…)の譲渡その他営利を目的として継続的に行われる資産の譲渡」(1号)
②譲渡所得の趣旨→値上がり益を目的をするか否か。
★過去問・株先物
契約(⇔株)の相殺から説明する?
★ 固定資産と原価償却資産
→棚卸資産等(33③ⅰ)とは異なり、譲渡所得たりうる。
雑所得との区別
(事業性の判断)
(定義)令63条の「事業」は、個人の危険と計...