89回問16
物質の性質に関する記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
非電解質の希薄水溶液の凝固点は、溶質の重量モル濃度に比例して降下する。この比例定数をモル凝固点降下定数とよび、物質固有の定数である。
融解熱、蒸発熱、昇華熱を状態量として取り扱うことができるのは圧力一定の場合で、それぞれ固相→液相、液相→気相、固相→気相への状態変化に伴うエンタルピー変化量に対応している。
融点は、圧力一定のもとでの固相と液相が平衡状態にあるときの温度で、純物質の場合、物質固有の値をとるが、必ずしも凝固点と一致するとは限らない。
ラウール(Raoult)の法則が成立する溶液について、溶媒Aの蒸気圧降下の大きさ⊿Pが下式で示されるのは、溶質が揮発性の場合に限られる。
⊿P=PoA・XB(PoA:純溶媒Aの蒸気圧、XB:溶質Bのモル分率)
H2OがH2Sより沸点が高いのは、酸素原子の方がイオウ原子よりも水素結合形成能が強いことに起因している。
1(a,b,c) 2(a,b,e) 3(a,c,d)
4(b,d,e) 5(c,d,e)
解説 2
○ モル凝固点降下定数とよび、物質(溶媒)固有の定数であり、溶質固有の値ではない。
○ 固相→液相、液相→気相、固相→気相への状態変化をそれぞれ融解、蒸発、昇華といい、その際に吸収する熱をそれぞれ融解熱、蒸発熱、昇華熱という。また、融解熱、蒸発熱、昇華熱は反応前と反応後の状態によって決まる状態量として取り扱う。
× 純物質の場合、圧力一定のもとでは、融点と凝固点は必ず一致する。
× ラウールの法則とは、溶媒に溶質を溶かした時、溶媒の蒸気圧降下の大きさは溶質のモル分率に比例するという法則である。なお、溶質が不揮発性物質の場合に限り、ラウールの法則が成立する。
○ 酸素原子の方がイオウ原子よりも電気陰性度が大きいため、H2Oの方がH2Sに比べ、水素結合形成能が強い。このことより、H2Oの方がH2Sに比べ沸点は高くなる。