「ソーシャルワーカーとは何か、その定義と、人と環境との交互作用について述べよ。」
社会福祉について
社会福祉は、社会生活を。人々の日常生活に困難をきたすような諸問題が、個人的要因だけでなく社会の仕組みに問題があるという社会的要因が認識され、必要不可欠な社会的仕組みとして確立してきた。
現代社会における社会福祉は、経済的援助だけでなく、非経済的援助も含めた様々な個別援助に対し、数多くの法令が規定され、機関や施設、サービス等の実施という全国民的施策となった。その枠組みの幅が広がるほど、社会福祉も目的を達成していく為に援助を必要とする人々とどのように関わり、必要なサービスとどう結びつけるかが重要となる。この社会福祉の専門的実施活動が社会福祉援助活動であり、ソーシャルワークであると言える。
また、社会福祉とは、人間システムと環境システムの接触面への介入であり、介入は望ましい目標達成の決定には価値の主体的選択が成されるべきであるとし、個人や社会とは、不可分に統合され機能している。ソーシャルワークでは、個人であるクライエントを状況ない存在としての人として捉えている。
ソーシャルワークの定義
国際ソーシャルワーカー協会が2000年7月に示したソーシャルワークの定義では、「ソーシャルワーク専門職は、人間の福利(ウェルビーイング)の増進を目指して、社会変革を進め、人間関係における問題解決を図り、人びとのエンパワーメントと開放を促していく」としている。この定義では、ソーシャルワークとは個人の社会生活の機能を高めるため、社会制度、社会資源、サービス等の環境と人々に専門職として責任ある介入を行う事としている。それは大きく6つの要素に分ける事ができるとされる。①人々に資源やサービスを提供する社会制度が効果的で人間的に機能するよう推進し、支援者の生活の質が向上する事で、自己実現できるよう具体的な支援や援助を行い、②現在の社会政策の改善と開発に関わる同じような問題が発生しないよう政策や人々に意識変革を働きかけ、法律や制度の改善、制度利用基準の改善、サービスの運用方法の改善などの具体的なサービス内容の変革や適用方法に働きかけることで、人々に資源やサービス、機会を提供する社会制度と人々を結びつける。そして③人々が発展的に問題を解決し、困難に対処できる能力を高めるよう、人々に関わり対象者を取り巻く環境の中の様々なシステムを理解することであるとしている。④当事者と協働し人々が不利益な状況から解放され、社会資源を活用できるよう力をつける事を支援し、社会的法摂(ソーシャルインクルージョン)を促進する。⑤人間の発達と行動、社会システムに関する理論を応用し、
科学的根拠に基づいた方法や技術を活用した支援を行わなければならないとし、⑥個人のみ、環境のみへの働きかけだけでなく、望ましい変化や変革を導き出すため、人々がその環境と相互に影響し合う接点に介入し、支援の対象者、それらを取り巻く環境の幅広い変革を促進することとされる。
ソーシャルワークの使命とは、人とその環境の間に起こる複雑な相互作用に働きかけ、全ての人々の持つ可能性を十分に発達させることと、その生活を豊かにする事、機能不全を防ぐ事にあるとし、ソーシャルワーカーは問題解決と変革に焦点をあて、支援する個人、家族、コミュニティ等の人々の生活に変革をもたらす仲介者でもあり、ソーシャルワークは、価値と倫理及び実践が相互に関連し合うシステムである、としている。
ソーシャルワーカーの焦点は、人と環境との関係に問題があり、その事が社会生活上でのニーズを引き起こしていると明確化された。人と環境との全体を捉える事で、ホリスティック(全体的)アプローチや生活モデルと呼ばれ、人と環境との関係に焦点を当てるために、エコロジカル(生態学的)アプローチとも呼ばれている。
人と環境との交互作用について
ケースワークの母と言われ、ケースワークの理論化を始めてしたリッチモンドは、「人と環境との関係の問題」としてケースワーク対象を捉え、バーレットは、「ソーシャルワークが関心を向け責任を取るのは、人間と環境との交換の結果に関する知識と価値を最大限十分に、また自由に活用していけるよう、社会生活機能を理解していくところにある」とした。ピンカスとミナハンは、「人々と資源システムとに連結や相互作用焦点がある」とし、ソーシャルワークを生態学的に捉えたジャーメインは、人々の持っている内的資源と彼らの生活状況での外的な社会資源を合致させる事がソーシャルワークの仕事であるとしている。つまり、人々の問題状況は、諸資源の交互作用家庭の結果とみている。また、国際ソーシャルワーク協会ではソーシャルワークを再定義し、そこでは「人と環境との相互作用する場面に焦点をあて、支援するものである事、あるいは、人と環境との多様で複雑な交互作用に焦点を当てる」としている。
日本でも、岡村の社会関係という概念を使用し、社会関係とはすべての個人が生活上の要求を充足するために利用する社会制度との間に取り結ぶ関係としている。
ソーシャルワークが捉える人と環境との関係には、人が環境に影響を与えたり(医学モデル)、環境が人に影響を与える(社会モデル)といった原因・結果に基づく相互関係ではなく、人と環境が相互に影響し合っている関係であり、それを交互作用関係として捉える生活モデルの考え方であるとしている。WHOの国際生活機能分類(ICF)でも、人と環境の関係を従来の原因・結果という因果論的関係から、交互関連作用として障害を捉える考え方に移行し、ソーシャルワークの類似の考え方になっている。
人と環境との交互作用に焦点を当て、個人と環境の間で交わる継続的な相互交換の中、それを通じて絶えず相互に影響し合う事を呈示する生活モデルにおいて、人間との成長と発達に監視を持つが、それは人と環境の高と作用の結果として生じる者として捉える。環境には物理的環境と社会的環境の二つに分けられ、社会福祉援助技術における生活理解の幅を広げているとされる。
ソーシャルワークが必要な状況とは、生活モデルに負って考えた場合、個人や家族を取り巻く環境面の接触面における、不適切な交互作用が問題を引き起こすこととなる。そのため、援助の目標は、個人や家族の環境への対応力を高めるとともに、環境側に位置する家族などの不適切な対応を修正するように社会生活問題を解決・緩和していく事になる。
おわりに
人が社会生活を送る上で、多様な問題にぶつかる。それらの問題を解決し、より良い暮らしを継続、維持できるよう支援する方法の一つがソーシャルワークである。しかし、実際の実践は、社会変動やソーシャルワーカーが所属する機関や組織の在り方により、揺らぎながら展開される事も多い。「ソーシャルワークの定義」は、その実践を確かなものにする指針であると同時に、今後の行方を定める羅針盤でもあると考える。
参考著書
『相談援助の基盤と専門職』
中央法規 2009年3月
社会福祉養成講座編集委員会
『相談援助の基礎と専門職』
久美株式会社 2009年 4月
相澤 譲治・杉本 敏夫編著
『社会福祉基礎シリーズ・ソーシャルワーク実習』
有斐閣 2009年4月 第3版
岡田 まり・柏女 霊峰・深谷 美枝・藤林 慶子編著
社会福祉援助技術Ⅰ
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