地域福祉論②

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    資料紹介

    資料の原本内容

     「地域福祉における住民自治・住民参加の意義について考察しなさい。」
     1 はじめに
    地域福祉において住民参加拡充のために、自治体の基本理念を明らかにし、行政・議会・住民の間で共有することが必要で、住民自治は、地方運営はその地方の住民の意思によって行われるべきという概念で、住民一人ひとりが、自分たちの地域の事は自分たちで考え、行政と連携・協働しながら地域づくりをしていくという考えが地域福祉活性化につながるものである。
    2 地域福祉の推進
    我が国において、伝統的な家庭や地域の相互扶助機能は弱体化し、地域住民相互の社会的繋がりの希薄化など、地域社会は変容しつつある。少子高齢社会の到来、経済成長も期待できず、産業の空洞化、近年の深刻な経済不況が追い打ちをかけ、このため高齢者・障害者等生活上支援を必要とする人々は一層厳しい状況に置かれ、ホームレス、虐待、引きこもりなどが新たな社会問題となっている。一方、近年、地域の福祉施策はさかんとなり、ボランティアやNPO法人の活性化、社会福祉を通じて新たなコミュニティ形成を図る動きも顕著である。こうした、相矛盾した社会の中、市町村を中心とする福祉行政の役割は極めて重要となり、加えて地域住民の自発的な助け合い等も徐々に活性化してきている。1990年頃の社会福祉基礎構造改革において、社会福祉の基礎は自立した個人が地域住民としての繋がりをもち、ともに支えあい、助け合い(共助)、共に生きる(共生)街づくりの精神が、その人らしい安心で充実した生活が送れるよう地域社会を基盤とした、地域福祉の必要があるとした。
    3 地域分権化と地域福祉計画
    1990年の社会福祉八法改正をはじめに、在宅サービスの法制化、措置権移譲に伴う保健福祉サービスの市町村への一元化、高齢者・障害者・児童分野でのサービスの計画化など、地域住民の生活に密接した市町村を中心に、保健福祉サービスの提供体制の基盤整備が進められ、社会福祉事業法において、地域に根差した福祉サービスの統合的な実施、福祉サービスに対する地域住民の理解と協力が定められる等、地域福祉の推進が謳われ、2000年6月の社会福祉事業法から社会福祉法への改正により自立支援が社会福祉法の社会福祉施策を進める上での基本であり、事業所からの立場ではなく自分たちの暮らしは市民の立場や目線から福祉施策を考えるというものになり、住民参加による行政と共に自分たちの暮らす地域の福祉を作っていくという地域福祉計画の必要性が社会福祉法に盛り込まれた。
    福祉サービスの担い手を行政だけでなく、コミュニティやNPO法人、地域住民等の役割分担化し新しい福祉の考えを明確にし、これからの地域福祉の担い手としての住民やNPOとへの期待を表明したもので、三位一体の地方財政改革である地方への財政移譲など更なる分権政策の進行の下、地方自治体の自立的、独自性の高い地域経営が可能となるが、一方では地域間格差が生じている。国の移行でなく、住民のニーズに沿った事業を吸い上げて実施することが必要であり、様々なニーズの中、財政遍直の状況下での事業選択、行政組織の縦割りでない統合的観点からの調整と新たなニーズに即した政策形成能力が求められる。それだけに地域づくり、地域福祉に対する住民の合意が今まで以上に重要で、同時に住民NPO の参加・協同が不可欠で「分権の時代」は住民自身の意義や行動が地域福祉の鍵であり、つまり福祉における地方分権、地方自治を進める道具として、地域福祉計画があり、これを進めていくためには、地域住民が政策に関心をもち、参画し提案できるような仕組みが求められ、住民自治、地方自治を作っていくということである。
    地方福祉の取り組みは、行政だけでできるものではなく、住民参加によって初めて取り組まれる課題であり、地域生活問題などを個人的に解決するのではなく、地域全体で集団的に解決していくことが地域福祉の目的であり、それを行うには、「公私協働・官民協力」でパートナーシップを図らなければならず、福祉は公共的であるが、市民も公共的な一端を担い、公共的な活動をする権利と権限や責任もあるとした。
    4 地域福祉計画策定のねらい
    個別計画毎の策定による縦割り施策の解消と、福祉施策全体の統合化の実現と三位一体の改革の流れに対応した効果的な施策展開、住民にとって身近な問題である福祉分野から新たなコミュニティづくり、街づくりを考える、住民参加機会の提供と実践的活動の促進でこれらを通じた、住民意識の一体感と地域コミュニティの活性化を図るものとし、行政計画でありながらも福祉サービスにおける個人の尊厳の保持を基本とし、自己決定・自己実現の尊重・自立支援など、住民等による地域福祉推進のための参加や協力に立脚し策定されるべきであるとしている。
    介護保険制度等の措置の枠組みから契約へと変革し、2002年の「社会福祉保障審議会福祉部会」において「市町村福祉企画及び都道府県地域福祉計画策定指針の在り方について(一人ひとりの地域住民への訴え)」が取りまとめられ、市町村が市域福祉計画を策定する努力義務の規定が施行された。地域福祉計画とは、今までの「高齢者保健福祉計画」や「障害者福祉計画」など福祉分野ごとの施策の充実や公的サービスの基盤整備を目的とした行政計画とは異なり、住民主体の地域福祉の推進を主な目的に掲げた計画であり住民参加が1つのキーワードとなっている。
    これまでの社会福祉の考え方は、社会的弱者が生活する事を保持することにあったが、今日では、その日らしい生活ができるよう知己全体で支えていくノーマライゼーションの考えが重視され、「社会福祉に関する活動を行うものは、相互に協力し、福祉サービスを必要とする地域住民が地域社会を構成する一員として日常生活を営み、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が与えられるように、地域福祉の推進に努めなければならない」とし、地域住民等の相互協力を不可欠とし、高齢者・障害者。児童福祉等解消別の福祉計画やほけに良計画、街づくり計画等を含め地域福祉の在り方について、「住民参加」や「住民と行政の連携」といった視点から新たなコミュニティづくりを目指す必要があるとした。また、統合的サービス提供体制はこれまでの福祉制度下において福祉サービスの利用者を各制度の対象として捉え、提供されるサービスは利用者のある側面に対する支援の視点でしかなかったが、これからの福祉サービス提供にあたり、利用者の状況に応じた自立生活全般における支援の在り方に着眼し、保健・医療とも提携し、公的制度によるサービスと制度外サービスとの組み合わせによって多様な福祉マネジメントが統合的に提供される新たなサービス体系としてのケアマネジメントシステムを確立していく事にあるとしている。
    5 住民参加の意義
    地方分権化を住民参加の拡大にどう結びつけていくか、特に障害者等の社会的発言力の弱い住民が政策形成に関与する企画をいかに保障するかが課題であり、地域福祉活動に住民が当事者として参加し行政や施設との逗留を深める公私協働により、地域の福祉の質の向上がさらに図れるのではないかと考えられる。
    参考著書
    『社会福祉キーワード』補訂版 2006年8月
    平岡 公一 ・ 平野 隆之 ・ 副田 あけみ編著
    有斐閣双書
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