序文
知能は「知識と才能,知性の程度,環境に対する適応能力」と一般的な広辞苑では定義されている(小林, 2001)。しかし,知能に対する定義は諸説あり心理学における知能論もこれと同様の意味を持っているもの,いないものがある。1905年に初めて,知能を測定する為に知能検査を作成したフランスのBinet, A.によると,知能は「精神の一定の方向を決め,それを維持する傾向であり,目標に達する為に必要な調査を行う能力であり,そして自己批判を行う能力である」と定義されている(松原,1970)。初めにBinetが作った知能検査は,精神衰弱児を発見する目的として作成したものであったが,以来この検査は,精神衰弱児の発見には欠かせない心理検査として,今日まで広く利用されている。この検査は1905年に初めて出版されてからその後何回か改訂が行われ,「改訂スタンフォード・ビネー知能検査」として1960年に標準化された。この検査は世界中で広く利用荒れていたが,知能の高低は測定できても,後に出てくるウェクスラー法のような知能構造の診断はできない,肢体不自由児・言語障害児には実施困難な検査項目がある,などの問題...