W社会福祉法人が経営する介護老人保健施設に入所中のAさんは、職員Bの不注意により転倒し骨折した。この場合Aさんは、W社会福祉法人と職員Bに対して損害賠償を請求できると考えられる。損害賠償責任の概要について述べたうえで、WとBに損害賠償責任が発生する理由について論じよ。
はじめに
介護老人保健施設とは、介護保険法に基づいて設置され運営される、高齢者の自立した家庭生活を支援する施設であり、病状安定期にあり、入院治療の必要はないが、リハビリテーションや看護・介護を必要とする要介護者が利用対象者である。
損害賠償とは、他人に損害を与えた者が被害者に対しその損失を填補し、損害がなかったのと同じ状態にすることであり、他人に故意・過失があって損害が生じた場合、被害者は損害賠償を請求する権利がある。
損害賠償を大別すると、契約当事者の債務不履行により損害が生じる場合と、契約関係はなく事故により損害が生じる場合とがあり、前者は契約責任によって、後者は不法行為責任によって生じた損害を賠償するものである。
今回の件では、施設内で職員の不注意によって転倒事故が発生しており、他人に過失があったと判断するこ...