部分社会の法理とは、一般市民社会の中にあって、それとは別に自律的な法規範をもつ特殊な社会、部分社会の紛争は、その内部規律の問題として自治的な措置に任せて、すべて司法審査の対象外であるとする見解を指す。
この部分社会の法理は、判例によって形成された点に特色があり、米山内事件(最大決昭28・1.16民集七巻一号十二項)での田中幸太郎裁判官の少数意見に由来する。
田中は「議会の内部関係の問題に司法権が全く関係しないのではない。この関係のある方面は地方自治法によって定められている。又、憲法に規定する法の下における平等の原則のごとき議会の内部関係にも関係をもつ。ただ、地方自治法及び会議規則に違反し懲罰を科すべきものかどうか、又、如何なる種類または程度の懲罰を科すべきかは議会が最終決定件を持つ」とした。
理由として、「これを法秩序の多元性に求めなければならない。法秩序は社会の多元性に応じて多元的である。特殊的法秩序は、一般的法秩序とある程度の関連があるものもあればないものもある。その関連の程度は、国家が公共の福祉の立場から決定すべき立法政策上の問題であり、個々の場合に同一ではない。」とした...