イスラエル宗教史とアブラハム、モーセの信仰
アブラハムとモーセにはいくつかの共通点がある。それは神の啓示に従って「約束の地」へと向かったことである。私はこの二つの物語から、彼らの神への信仰、そして、聖書とイスラエル宗教史の関係を探って行きたい。
アブラハムの信仰
創世記によると、アブラハムの父「テラは、息子アブラムと、ハランの息子で自分の孫であるロト、及び息子アブラムの妻で自分の嫁であるさらいを連れて、カルデアのウルを出発し、カナン地方に向かった。 」その旅の途中、ハランにおいてアブラハムは神からの啓示を受けて、妻のサラと甥のロトと蓄えていた財産すべてと、奴隷を携え、カナン地方に出発するのだ。
この時、アブラハムは神に対してどのような信仰を持っていたのだろうか。当時のウルやハランはユーフラテス河に沿った古代の多神教世界であり、恒星や惑星、特に太陽や月を礼拝していた 。そのような環境で育ったアブラハムがなぜ、唯一の神を信じ、75歳という年で、父の家を離れることを決意することができたのか。
これにはいくつかの仮説が立てられる。まず、多神教であったアブラハムがハランでの神からの啓示を受け...