『学力低下とは何かを明らかにし、社会階層のような社会的不平等と学力がどのような関わりを持つのかについて述べよ。』
今日、学力低下に関する議論が盛んで、非常に煽情的な議論がされている。学力低下自体は、昔から様々な形で繰り返し議論され、全く新しいことではないが、今日展開される議論は明らかに違う。具体的な国際比較や時系列的なデータが示されたのと同時に、学力低下が教育現場で教育に携わる関係者に実感されていることから、学力低下論は社会的反響や議論を生んでいる。その議論には、学力低下と国家の国際的地位の低下との関連や、学力低下が起きたかどうかの認否をめぐるものもある。だが、国家・社会の力や国際的地位を重視する側、児童・生徒の立場を重視する側にも、昨今の「ゆとり教育」を歓迎する向きも多い。よって、今日の議論は、過去の議論とは明らかに質が違い、現代の「学力低下」論は、新しい世代の学力が前の世代の学力に及ばず、縮小再生産の過程が始まったのではという疑念があるところに根本的で深刻な問題がある。この疑念のさらに根本にあるのは、「学ぶ」、「勉強する」ことへの価値付けの低下である。
将来貯蓄型と言える学習観は、...