基礎実習レポート2

閲覧数5,313
ダウンロード数21
履歴確認

    • ページ数 : 4ページ
    • 全体公開

    資料紹介

    資料の原本内容

    基礎実習レポート  1-2 電位差滴定
    2010/04/23 実験実施

    2010/04/28 提出
    Ⅰ.目的

       滴定終点検出法(第14改定日本薬局方、p62)の一つである電位差滴定に基づく中和滴定(酸塩基滴定)を行うことにより、本滴定法の基本操作ならびにガラス電極を用いるpH測定法(第14改定日本薬局方、p69)を習得する。
    Ⅱ.概要

     1)pHメーターの調整を行った。

     2)前項1-1で調製した容量分析用標準液について電位差滴定した。すなわち0.1mol/L塩酸を0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液によりpHメーターを用いて滴定した。得られる滴定曲線から、0.1mol/L塩酸のファクターを求めた。

     3)pHメーターを用いて、有機酸を含む検液の滴定曲線を作成し、有機酸の濃度およびpKa’を推定した。
    Ⅲ.原理

     テキストに準ずる。
    Ⅳ.実験手順

    pHメーターの調整
     指示に従いながらpHメーターの調整を行った。pH=6.89の標準緩衝液とpH=4.00の標準緩衝液を用いて校正を子なった。
    塩酸の滴定曲線の作成
     前項1-1で調製した0.1mol/L塩酸20mLをホールピペットを用いて精密に100mLビーカーに量りとり、1)で校正を行ったpHメータの先端を液に浸した。ガラス電極が完全に溶液中に浸るまでイオン交換水を加えた。検液をマグネティックスターラーで撹拌しながら0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液をビュレットを用いて滴下し、各滴下ごとにその時のpHと滴下mL数を記録した。同時に方眼紙にグラフを作成し、特に当量点付近では2滴ずつ滴下し、注意深くpHの変化を測定した。
     グラフに作図を行い、傾斜の最も大きい点を当量点として、その時の水酸化ナトリウム水溶液の滴下mL数を求めた。さらに、この値から、0.1mol/L塩酸のファクターを計算し、前項1-1の滴定で求めた値と比較した。
    有機酸の定量とpKa’の推定
     有機酸10mLをホールピペットを用いて精密に100mLビーカーに量りとり、1)で校正を行ったpHメータの先端を液に浸した。ガラス電極が完全に溶液中に浸るまでイオン交換水を加えた。検液をマグネティックスターラーで撹拌しながら0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液をビュレットを用いて滴下し、各滴下ごとにその時のpHと滴下mL数を記録した。同時に方眼紙にグラフを作成し、特に当量点付近では2滴ずつ滴下し、注意深くpHの変化を測定した。
     グラフに作図を行い、傾斜の最も大きい点を当量点として、その時の水酸化ナトリウム水溶液の滴下mL数を求めた。さらに、この値から、有機酸の濃度を計算し、グラフから読み取った値によってpKaを推定した。
    Ⅴ.結果
    2) 塩酸の滴定曲線の作成
     データから描いた滴定曲線を【グラフ1】として添付した。カーブを描くところ二か所に平行となるように接線を引き、その接線間の垂線の垂直二等分線と、滴定によって得られた曲線の交点を作図により求めた。この交点を当量点とみなし、水酸化ナトリウム水溶液の滴下量を読み取ったところ18.01mLであった。
     
     塩酸と水酸化ナトリウムは以下の反応式で表わされる。
     HCl+NaOH→NaCl+H2O
     ここで塩酸の実際の濃度をX, 当量点でのNaOHの滴下量をY,塩酸および水酸化ナトリウムのファクターをfNaOH, 塩酸のファクターをfHClとすると、
     20X=Y×0.1×fNaOH

      ∴X=18.01×0.1×1.186(前項1-1の標定によって求めた値)/20
    ∴fHCl =X/0.1
       =18.01×1.186/20

         =1.068

         ≒1.07
    3) 有機酸の定量とpKa’の推定

    データから描いた滴定曲線を【グラフ2】として添付した。カーブを描くところ二か所に平行となるように接線を引き、その接線間の垂線の垂直二等分線と、滴定によって得られた曲線の交点を作図により求めた。この交点をそれぞれ第一,第二当量点とみなし、水酸化ナトリウム水溶液の滴下量を読み取ったところそれぞれ8.58mL,17.59mLであった。またこの時のpHはそれぞれ、2.28,6.02であった。
    滴定曲線より、用いたのは二価の弱酸であり以下のように反応すると考えられる。

    AH2 +NaOH→AHNa+H2O
    AHNa+ NaOH→ANa2+H2O

    滴定開始から第一当量点までの滴下量と、第一当量点から第二当量点までの滴下量の平均は8.795mLである。これとo.1mol/L NaOH液のファクターf=1.186を用いて試料液の濃度をXmol/Lとして計算すると、

    0.1×1.186×8.795=X×10

      ∴X= 0.1043

    = 1.04×10-1(mol/L)
    二価の有機酸の水溶液中での解離反応は以下の式で表わされる。

    H2O+AH2 ⇆ AH-+H3O+

       AH- + H2O ⇆ A2- + H3O+

       この時、第一解離定数をKa1 第二解離定数をKa2 とすると、

       Ka1=[AH-][ H3O+]/[AH2][ H2O]

       Ka2=[A2-][ H3O+]/[AH-][ H2O]

       すなわち、H2Oは大量に存在するので、近似して、

       Ka1=[AH-][ H+]/[AH2]

       Ka2=[A2-][ H+]/[AH-]

      ∴pH=pKa1 +log10[AH-]/[AH2]

      ∴pH=pKa2 +log10[A2-]/[AH-]

    当量点では[AH-]=[AH2],[A2-]=[AH-]であるから

    pKa1=2.28, pKa2=6.02と推定できる。

       

    ただし今回は簡便のため、上の二式をそれぞれ滴定開始から第一当量点までと、第一当量点から第二当量点まで成立するものした。
    Ⅵ考察

    <塩酸のファクターについて>

    滴定曲線から求めた塩酸のファクターはf = 1.07であったが、これは指示薬法によって標定した値f = 1.40と大幅な誤差がみとめられる。今回はpHメーターを用いて滴定曲線を作成し、また作図以外の操作手順で数値の誤差が発生することはほとんどないと考えられる。すなわち、前項の標定の際に求めたファクターの値が実際よりも大きかったと考えるのが妥当である。

    塩酸の標定において用いたpH指示薬であるメチルレッドは、変色領域をpH=4.4~6.0に持つ。炭酸ナトリウムと塩酸の中和反応における中和点のpHすなわちpKaの理論値は約4.2であり、実際の当量点より少ない量で塩酸の滴下を終了してしまった可能性がある。つまり、前項の滴定では実際のファクターよりも大きく計算してしまった可能性がある。仮に2mL塩酸の滴下量が増えたとして計算するとファクターは約0.12小さくなる。また、ビュレットに液を満たしたり、ビーカーにとる作業を行う過程で一部が揮発して濃度が小さくなったこともずれの一因として考えられる。
    <pKaについて>

     滴定曲線から二つの当量点を求める際に作図を行ったが、この際に多少のずれが生じ、推定したpKaと実際のpKaの値に誤差が生じる可能性がある。

    また、簡便のためにHenderson-Hasselbalch式を用いたが、実際には第一当量点において不均化反応がおこると考えられ、厳密には上の式は成立しないとされる。よってこのことも実際の値との誤差の一因になると推測する。
    Ⅶ参考

    斎藤寛ほか編,パートナー分析化学Ⅰ,南江堂,2007,299p

    上釜兼人ほか編,最新製剤学第二版,廣川書店,2007,451p
    本文以上

    次ページ,次々ページにグラフを付す。
    4

    コメント0件

    コメント追加

    コメントを書込むには会員登録するか、すでに会員の方はログインしてください。