道徳の指導法07806
道徳教育の理論と方法
■道徳教育のあゆみ
1872年に学制が発布された。学制の教育理念は西洋の実学知を重視したもので、その根底には啓蒙主義理念があった。「修身」の授業の教科書として欧米の書物の訳書が読まれた。これまでの儒教倫理による道徳教育観は後退した。しかし明治10年代に入るとそれに対する批判が起こった。元田永孚は儒教の道徳を国教にして国民道徳の基とすべきだと主張した。1880年に出された「改正教育令」では儒教道徳が再び強くなった。また1882年には文部省が欧米近代思想を根本原理とする道徳に否定的な見方を示している。福沢諭吉など開明派の知識人たちはこれに反発した。
道徳観を巡る論争はしばらく続いた。特に明治20年代前後は百家争鳴の状態にあった。そうした中、明治1890年、「教育ニ関スル勅語」が発布された。「道徳の根源は国民個人の自由意志に基づく」という立場から、あくまで明治天皇の個人的意志として発布された。これは儒教主義的道徳と西洋近代倫理が折衷された内容であった。徳育論争にも一応の終止符が打たれた。教育勅語の、学校現場への定着は早くから図られている。修身...