キレート錯体の物性とその利用

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    資料紹介

    キレート錯体の物性とその応用について、キレート効果の熱力学的な考察からはじめ、キレート剤の物性の応用例(①キレート滴定②廃水の浄化③液相から有機相への抽出)について既往の研究などをまとめた。

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    キレート錯体の物性とその利用
    はじめに

    キレート錯体は、複数の配位座を持っている多座配位子が金属イオンに配位した錯体である。単座配位子に比べて、10の10乗倍ほど平衡定数が大きい安定な錯体を形成する[1]のが特徴である。この特徴から、体内の重金属除去(キレーション療法)、合成洗剤の洗浄効果を引き出すための洗浄助剤(Ca,Mgの除去による水の軟水化)としてなど、様々な分野で利用されている。このような、重金属に多座配位子が選択的に配位したユニークな錯体であるキレート錯体の物性を考え、それを効果的に活用している技術について考察する。
    キレート効果
    エチレンジアミン(ethylenediamine) (Fig.1)とNiの錯形成反応を例にして、キレート錯体が安定化する(キレート効果)根拠を考える。
    Fig.1 ethylenediamine(en) 
    NH3錯体からen錯体への配位子置換の反応式は、

    [Ni(NH3)6]2++(aq)+3en(aq)⇔

    [Ni(en)3]2+(aq)+6NH3(aq)

    である。この反応によるギブスの自由エネルギー変化は

    ΔG=ΔH-TΔS

    = -...

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