はじめに
図書館法によれば、図書館とは「図書、記録その他必要な資料を収集し、整理し、保存して、一般公衆の利用に供」する施設である。様々な資料に記録された情報は、図書館で収集、組織、保存され、最終的には利用(提供)されることで、図書館の価値が証明される。資料提供とは、資料の利用を生みだすサービスにほかならず、図書館活動を考える際の基礎となるべきものである。公共図書館における、資料提供サービスの中心に位置するのは、貸出しサービスである。ここでは、公共図書館の貸出しの意義について考えていきたい。
2、公共図書館での貸出しの意義
公共図書館は、地域の人々に読書や調べ物のための資料を提供するという今では当たり前のサービスが、以前は当たり前ではなかった。かつての日本の公共図書館は資料の質、量が貧弱で、施設と資料を管理することに重点を置いていた。また、資料の管理上の問題から、閲覧サービスを中心としており、貸出しには、住民票を提出し、保証人を立て、場合によっては保証金を預けなくてはならなかった。このような状況のもと1963年に出版された『中小都市における公共図書館の運営(中小レポート)』では、当時...