≪シュヴァンクマイエルの人形と身体》
「身体論2」第4回の村井先生の講義でヤン・シュヴァンクマイエルの『アリス』を鑑賞し、その奇妙な世界観に驚きその後改めて全編を見た。『アリス』には人形や様々な素材でできたグロテスクな生物が多々登場するが、これはシュヴァンクマイエルの作品で「触覚(身体的感覚)」と「人形」が大きな意味を持つためである。さらに特異な身体イメージを持つと評されることもあり、そのような彼の作品から身体と人形について何らかの関係が見いだせるのではないだろうか、それについて以下のように考えてみた。
まず、彼が触覚をどのような感覚としてとらえているかについては彼の最初の著作『触覚と想像力』で表明している。それを要約すると、わたしたちは何かに触れればその痕跡を外部に表すが、同時に自分自身の触覚の感覚、自分の触感の感覚も知覚する。このため触覚は主観的でもあり客観的でもあるといえ、〈主観―客観〉の対立を乗り越えうる。触覚は美的知覚から切り離されているために世界との原初的な結びつきを...