フロイトの心理分析については、この世に多くの著作が残されている。ほとんどは人間の意識に対す分析で、主には衝動、抑圧、無意識などの内容である。
心もまた肉体と同様に、自然の法則とメカニズムに支配されている。私達にとって、通常この法則とメカニズムは、無意識になっているが、本当の意味で自分自身の心の主になるためには、この無意識の世界を知らなければならない。思い通りにならない心の働きについて、正しい認識を持つことによってのみ、私達は心に対する主権者になることができる。
自我という概念は、最も広範囲にわたる意義を持ち、根本的には、人間とは何かという問題に答えようとする時の中心的な概念である。そこで、フロイトは「抑圧するもの=意識=自我」、「抑圧されるもの=無意識=欲的なもの」を前提として、人間の全体構造を考える時、それをイド、自我、超自我、三つの部分に区別しているが、実は「自我の働きの多くの部分が、それ自体、無意識的であり、おそらく、その小部分のみが意識的と呼ばれるべきである」と述べるような認識を獲得するに至ったからである。フロイトは、このイドという言葉を未知で、無意識的で、その表層に知覚体系に...