王維の作品を読んで疑問点を一つ取り上げ、それに対する自分の考えを述べよ。
王維の詩の大きな特徴は自然の美しさや雄大さを表現した自然詩である。東晋の陶淵明の田園詩や宋の謝霊運の山水詩を受けつつ、よりダイナミックで絵画的に自然の美を詠う自然詩は、唐代の王維によって確立された。そのような王維の作品の中から『過香積寺』を取り上げて、様々な角度から論じたい。
『過香積寺』は次のような五言律詩である。「不知香積寺 数里入雲峰 古木無人径 深山何処鐘 泉声咽危石 日色冷青松 薄暮空潭曲 安禅制毒龍」
私は『過香積寺』の第八句にある、「安禅制毒竜」の「毒竜」とは何であるのかということについて疑問を抱いた。なぜなら、自然の美しさとまたその自然と融合した人間生活の楽しさを描いた名作を多く残している王維が、寺を題名に詠んだ詩の中に「毒竜」という言葉を使うのは相応しくないと感じたからである。また、寺を題材にしたのは、王維が深く傾倒したと言われる仏教の影響もあるのではないかと考えたのである。この「毒龍」はどんな意味があるのか、王維のどんなメッセージが隠されているのか、確かめてみたい。
考察の手順としては、まず...