「臨床心理学における人間理解の必要性および面接場面における留意点について述べよ。」
臨床心理学ではその歴史の中で様々な学派が登場してきたが、人間の心理的問題とその克服課程は全体としてあまり変わっていない。同じように、フロイトが説いた臨床心理学の原点である「人の話を聞くこと」も変わっていない。面接にて対話することにより、相手を理解し、援助の手を差しのべることが臨床心理学の中心課題となる。しかし、そのためには、対象となる人々に対する「人間理解」が行われていなければならない。
医学などにおいて「治療」とは、失われた機能を回復することが中心である。だが臨床心理学では、機能の回復だけが治療ではない。特定の機能が失われても、失ったまま人生を生き抜く、喪失を好機として更に意義ある人生を見いだすといったことが可能である。しかしそれには、その人にとって意味のある人生とはどのようなものかを見つけ出して援助をする必要がある。そのために相手の全人格を理解する「人間理解」が必要となってくるのである。
しかしその人の全人格について理解することは簡単ではない。現代社会では、人々が全て同一の背景のもとにある...