2011年度課題レポート・法学のものです。
法と道徳の関係について論じなさい。
序論
社会には多彩な行為規範が働くが、そのうち、特に法と道徳には如何なる関係があるか。
本稿では、まず両者が完全に峻別されるとする立場、及び完全に同一であるとする立場を述べる。次に両説を批判した上で、関連を認めながらも尚区別されるべきであるという主張を検討し、法と道徳の関係性を考察する。
本論
法と道徳の関係性は如何に捉えられるか。
第一に、法と道徳とは全く別異であり、併存するとの考え方がCh.トマジウスやI.カントらを代表として主張される(1)。即ち、法は他者との関係を規律し外面的平和を目指すが、他方道徳は主体の良心に関わり内面的平和を目指すものとする(2)。
よってこの見解では、法の特徴を外面性と強制性にあるとし、他方道徳の特徴は内面性と非強制性にあると考える。つまり、法と道徳とは峻別されるので、法に適いながらも道徳に反する行為があり、反対に道徳的に許容されても法的に違反する行為が存在し得る。
第二に、法と道徳とは根本的に同一であるとする説がある。確かに歴史的には、例えばユダヤ法の十戒のように法と道徳とが密接に結合し...