沖縄における「火」に対する信仰と「火」の災厄の係わり合いについて。どのように信仰が形成されて現在に残っているのか。また、中国の竈神信仰との比較。
沖縄における「火の災厄」について
沖縄にはヒヌカンという火の神信仰がある。しかし、火は時に人の生活を破壊するものでもある。ここでは沖縄において火に関する災厄がヒヌカン信仰と結びついているのかどうかを論述する。
【疑問:火に関する厄災についてはヒヌカンと関係あるのか】
ここで南島にある民話を見てみる。
天の神様の使いが家を焼きにくるが、嫁がかまどのあたりをきれいにしており、水瓶に水もはってあるので、焼くことができない。使いの神様は、何度来ても焼けないのでその家を起こし、「家の四つの隅から芽を取って庭で燃やし、大声で『火事だ』と言いなさい」と言う。家の人が言われたとおりにすると、使いの神様はその煙で天に昇り、「家を焼いてきた」と報告する。それで新しい家を建てると、家の隅からちりを集めて庭先で燃やす。(宮古郡・伊良部村)(永藤 p119)
ある家の壷の中に火玉が入りその家に火をつけようとしていると、女中が見つけてふたをする。火玉は天の使いでこの家を焼きにきたがつかまって焼くことができない。天に帰るからきびの葉を屋敷いっぱいに広げてくれ。それを焼いて家を焼いてきたと天に知らせよう」と...