「法と道徳は峻別しなければならない」とする考えについて論じなさい。
法と道徳は峻別しなければならないとする考えについて論じなさい。 法も道徳も、社会生活において我々の行為を規律する社会規範である。この法と道徳を峻別して考える意義は何か。それは、法と道徳の関係から、法の本質を明らかにすることである。
近代西欧国家以前においては、ローマ法を除けば法と道徳の区別はなかった。では、なぜ法と道徳は峻別されなければならなかったのか。それは、封建社会、封建制度からの脱却が背景にある。すなわち、人の支配から法の支配への転換である。その結果、「法とは何か」、「法の法たる所以とは何か」という法の本質を明らかにしなければならなかったその目的に貢献したのが法実証主義である。
しかし、20世紀に入ると、資本主義の弊害が顕著になり、近代法の形式的論理的な適用によっては処理しきれない労働、福祉等の社会問題が発生した。その解決のためには、従来の法と道徳を無関係な規範として切り離すわけにはいかなくなり、資本主義のエゴイズムに奉仕する近代法に歯止めをかけるためにも法と道徳との峻別が要請されるようになった。そこで、改めて「法とは何か」、「法を法たらしめるものは何か」という法の本質に関す...