株式会社A(以下「A社」とする)につき破産手続が開始し、Yが破産管財人に選任された。次の問いに答えなさい。
(1)YがA社の財産を調査したところ、時価5000万円の甲土地には被担保債権4000万円の一番抵当権のほか、被担保債権3000万円の2番抵当権が設定され、登記が具備されていた。そこで、Yは、甲土地を破産財団から放棄しようとしている。放棄を認めると法人の自由財産となるが、そもそも法人に自由財産を認めることができるのか。放棄できると仮定した場合に、どのような手続を取る必要があるか。
(2)上記(1)の場合に、甲土地に設定された抵当権が被担保債権4000万円の一番抵当のみしか設定されていなかった場合に、破産管財人Yは、担保権を消滅させたうえで任意売却したいと考えた。破産管財人は、どのようにすればこれを実現できるか。
(3)破産手続開始前に、A社はBを買主として乙土地の売買契約を締結した。Bは、A社につき破産手続が開始した後に、破産管財人Yに対して、乙土地の所有権を主張している。問題から不明な事実は場合分けしながら、BY間の法律関係について説明しなさい。
(4)破産手続き開始前に、A社はC社から会議室用応接セットを賃借していた。契約が終了したにもかかわらず、A社はC社に返還することなく、善意無過失のDに20万円で売却し、引き渡してしまった。A社につき破産手続きが開始した場合に、C社は破産管財人Yに対してどのような主張ができるか。また、破産管財人YがDから売買代金20万円を受け取っていた場合はどうか。
株式会社Aにつき破産手続きが開始し、Yが破産管財人に選任された。
1)自由財産とは、破産財団を構成せず破産者が自由に処分できる財産であり、自由財産は個人の場合、破産者の生活の維持や経済的更生の基礎となるが、法人の場合、生活保護の必要はなく破産が法人の解散事由とされていることから法人に自由財産を認めることができるのかが問題となる。学説は、肯定説と否定説に分かれる。肯定説は、旧法旧3条1項から在外財産は破産管財人の管理処分権に服さないこと、財団管理以外の社団法的又は組織法的活動は破産管財人の権限に吸収されないこと、同時破産手続廃止(破産法216条1項)後に財産が発見されたときの問題点を根拠に挙げる。否定説は、現行法は普及主義に転換したこと(破産法34条1項かっこ書)、破産債権者より社員などの権利を優先させることになり破産法の基本原理に反する等から法人に自由財産を認める理由はないとする。私見としては、肯定説の根拠は不十分であり、個人と違い生活保護の必要がない法人に自由財産を認める必要はないと考え、否定説の見解が妥当であると解する。しかし、破産財団の利益にならない場合、破産管財人は善管注意義...