HC体育概論Ⅰ科目最終試験

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    資料の原本内容

    S0608 体育概論Ⅰ
    1 子どもの体力や運動能力は、ただ単に大人を小さくしたものではないとされている。その根拠について具体的に述べよ。
     子どもの体力や運動能力は、ただ単に大人を小さくしたものではないとされているが、その根拠を述べる。子どもは、身体的・精神的に発育・発達の最中であり、成長に至る固体である。発育や発達の速度には個人差が大きく、男女差がある。一般的に女児が男児に比べ早く成長する。また、ヒトは生理的早産といわれ、教育でいかようにもなる。
     保健体育の分野では、発育発達を「子どものからだが年齢とともに大きくなり、その働きが徐々に大人の状態に近づくという年齢的な変化」として議論が進められている。ここでは、発育は身長や体重の増加といった”形態的変化”を、発達は「歩くようになる」とか「話すようになる」といった”機能的変化”を意味する言葉として捉える。発育には次のような一般原則が知られている。
     ①発育は全ての個体に共通した順序で進行する。これは運動機能の発達に代表される。
     ②発育には一定の方向性がある。原則として頭から手足の方向-頭尾方向に、あるいは中心から末梢方向-近遠方向に進行する。運動という観点からすると粗大な動きが発達するにしたがって、緻密な動きも発達する。ヒトでは最終的に上肢、特に指先の運動がきわめて緻密に発達するのが特徴である。個々の臓器や個々の機能は統合され「成熟」(種の保存に役立つ個体)の完成へ向かう。
     ③発育は連続的に進行する。しかし、一定の速度で進行しているものではない。
     ④発育には決定的な時期がある。この時期は比較的早い時期であり、ほぼ3歳以前であるといわれている。この時期に正常な発育を妨げる要因があると、以後回復不可能な状態に陥る。正常な発育を妨げる要因として、養育環境と教育が大きな位置を占めている。
     ⑤年齢が進むに従って発育の個人差が大きくなり、個体の特徴がはっきりしてくる。発育期でいうと思春期がこれにあたる。個体の特性がいかに発現するかについても養育環境と教育が大きな影響を与える。
    2 子どもの一人ひとりが体育実技の学習に、意欲的に取り組むようにするための学習指導の留意事項を列挙せよ。
     いかにして、児童生徒の体育に対する意欲を高めるかは、他人と比べる自我志向より、自分個人の上達を目標にする課題志向に委ねられる。課題志向の高い児童生徒を育てるには、TARGET《ターゲット》という仕組みの指導法がある。児童生徒の体育、スポーツの授業に対する意欲をもたせるような方法である。次の6つがあげられる。
     ①Task運動技能:体育の授業では、バラエティーに富んだ、挑戦的でかつ意義のある運動を取り入れるべきである。このような運動は、生徒児童が努力する意欲を誘い、また運動により満足感を得ることができる。また授業での技能の選び方は児童生徒自身や他人の運動能力の認知に影響することが分かる。たとえば、それぞれが違う技能の練習や異なるゲームへの挑戦など、他の児童生徒と比べる機会や必要性を減らすことによる多面的授業構成が大切となる。よって、個人が他人と比べることなく、自分自身の能力の向上に集中することができる。
     ②Authority権限:教師の与えた選択肢に対する決定権の有無、どのくらい児童生徒に決定権があるかが、体育授業や運動技能習得の意欲と関係する。たとえば、自分たちに決定権のある児童生徒は、決定権のない児童生徒に比べて、自分自身に対する運動能力の評価が高いことが分かっている。
     ③Recognition褒める:児童生徒にとって褒め言葉は1つの明確な意欲向上の要素である。しかし、全員に対して同じような言葉をかけるのではなく、個人の努力度合いや技能の習得に反映して声のかけ方が重要となる。それは、他人と比べることによる自我志向性より、課題志向性を助長することなる。
     ④Groupingグループ:同じような能力の児童が集まることのないように、グループを構成すること。それは、グループ内での競争の機会や必要性をなくし、安心して、技能に取り組むことができる。
     ⑤Evaluation評価:評価は、授業への参加、個人の目標に対する努力度合い、達成度、などに対して検討するのが望ましい。
     ⑥Timingタイミング・時間:指導を与えるタイミングや、練習ができるように、時間を充分に与えることが、児童生徒の体育に対する意欲に影響する。個人の上達の速さをまちまちであるため、児童生徒の特徴を認識し授業を進めていくことが大切である。
    3 安全能力を高めるための体育の役割と、その学習指導上の留意事項について述べよ。
     安全能力を高めるための体育の役割を述べる。体育学習には、その内容や場に危険な条件が多くあることと、体育のみの体質である身体の支配能力の向上を目指している点などを合わせて考えるとき、体育は安全教育をすすめる上において欠かすことのできない重要な教育分野といえよう。このため体育では「適切な運動の経験や心身の健康についての理解を通して、健康の増進と体力の向上を図るとともに、健康で安全な生活を営む態度を育てる」として、健康・安全に留意して運動を行う能力や態度を養いながら、普遍的な安全能力の育成をはかり、一方、交通事故防止など、安全な生活を送るための基本的な知識、能力、態度の育成をもねらっている。このように教科体育、体育的行事、体育的諸活動は、安全教育の中心をなすものといってよい。
     安全能力を高めるための学習指導上の留意点について述べる。事故の発生は、安全に対する意識の低さが主な原因であることはいうまでもない。この意識を高めるためには、学校・家庭・社会が一丸となって積極的にすすめるべきであって、「……してはいけない」「……を守りましょう」的な形式的で消極的な方途では、児童が自主的に「考え」「理解し」「行動する」習慣形成はできないし、安全意識を高めることもできない。やはり、「こうしたら安全だ」という積極的な心構えで行動するように指導することが、安全な行動のとれる能力や態度の定着化をはかれることになる。
    4 学習指導要領の第1章総則の第1-3項体育・健康のねらいについて述べよ。
     平成20年3月公示の学習指導要領の第1章総則の第1-3項体育・健康のねらいについて述べる。学習指導要領には以下のように書かれている。
     「学校における体育・健康に関する指導は、児童の発達の段階を考慮して、学校の教育活動全体を通じて適切に行うものとする。特に、学校のおける食育の推進並びに体力の向上に関する指導、安全に関する指導及び心身の健康の保持増進に関する指導については、体育科の時間はもとより、家庭科、特別活動などにおいてもそれぞれの特質に応じて適切に行うよう努めることとする。また、それらの指導を通して、家庭や地域社会との連携を図りながら、日常生活において適切な体育・健康に関する活動の実践を促し、生涯を通じて健康・安全で活力ある生活を送るための基礎が培われるよう配慮しなければならない。」
     このことは、学校教育の諸計画(過程編成)の策定にあたっては、家庭や地域社会との連携を大切にしながら、すべての教育領域において体育・健康に関する指導を適切に行うことを考慮すべきであるとしたものである。
     具体的には、各教科、道徳、特別活動、総合的な学習の時間及び業前・業間・放課後・給食の時間等のすべての時間帯において、体育・健康に関する指導について配慮することを示唆しているといえよう。
     「体育・健康に関する指導」とは、体力の向上はもとより、心の健康、薬物乱用、生活習慣病の兆候等の健康に関する現代的課題に適切に対応するなど心身の健康に関する指導をより充実する観点からのものである。
    5 体育実技を指導する者として、ぜひ備えておきたい考え方や資質について述べよ。
     教育課程審議会の答申によると、心と体を一体としてとらえ、児童生徒が運動を好きになることや健康的な生活習慣を身に付けることなどを目標としてあげている。したがって、体育実技を指導する者は、以下のことを備えておきたい。
     ①人間の行動を理解する・・・個人の性質とそれを取り巻く環境が、人間の行動に影響することを理解しておかなければならない。児童生徒にとって、教師の指導方法が彼ら、彼女らの運動能力の現状に合うか合わないかにより、運動に対するやる気に影響を及ぼす。少しでも個人の資質、能力を理解し、よりよい環境を作り出すことで、児童生徒の体育での経験が充実してゆくことであろう。
     ②自分を知る・・・「心と体を一体としてとらえる指導」を実践していくために教師が自分自身を知ることは、授業の展開や児童生徒との関わりによりよい影響をおよぼすこととなる。そして、自分の教師としての哲学、特徴などについて考え、確立すれば、児童生徒との信頼関係を確立することができる。
     ③コミュニケーションスキル・・・自分自身を知った後は、コミュニケーションで児童生徒のことを知る。メッセージの発信には、「わかりやすい」メッセージを発信することである。言葉以外にも、外見(魅力的な服装など)、姿勢、ジェスチャー、表情などによって相手にメッセージを伝える。
     ④児童が運動を楽しくできるようになる指導・・・自分個人の上達を目標にする課題志向が高まる指導を行うことにより、体育に対する意欲を高めることができる。
    6 体育(運動)ぎらいの子どもを生みださないための学習指導上の留意点について述べよ。
    (設題2と解答はほぼ同じ)
     いかにして、体育嫌いの児童生徒を生み出さなくし、児童生徒の体育に対する意...

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