権利擁護と成年後見制度
「消費者契約法に基づいて消費者が保護される場合の具体例を設定して解説しなさい。」
権利擁護と成年後見制度
「消費者契約法に基づいて消費者が保護される場合の具体例を設定して解説しなさい。」
消費者契約法は、2000年に成立した法律である。その目的は、以下の2つであった。「①事業者の一定の行為により消費者が誤認し、又は困惑した場合について契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消すことができることとする」、「②事業者の損害賠償の責任を免除する条項その他の消費者の利益を不当に害することとなる条項の全部又は一部を無効とする」
この法律は2006年に改正されて、消費者団体訴訟制度が盛り込まれ、3つ目の目的として、「③消費者の被害の発生又は拡大を防止するため適格消費者団体が事業者等に対し差止請求をすることができることとすることにより、消費者の利益の擁護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与すること」が追加された。
消費者と事業者との間には、情報・交渉力の格差が極めて大きい状況にあり、そのため様々な消費者被害が発生している。この状況を受けて消費者契約法はできたである。
第4条では、契約を取り消すことができる場合の3類型が以下の通り挙げられている。これらの場合においては、不適切な勧誘により消費者は誤認・困惑して契約したと判断され、契約を取り消すことが可能となる。
①「不実告知」重要な項目について異なることを告げること
「断定的判断の提供」将来において当該消費者が受け取るべき金額、その他の将来における変動が不確実な事項につき断定的判断を提供すること
②「不利益事実の不告知」当該重要事項について当該消費者の不利益となる事実を故意に告げないこと
③「不退去型勧誘」自宅などへ来た事業者に対して帰ってほしいといったのに帰らない
「監禁型勧誘」店舗などから当該消費者が帰りたいといったのに帰してもらえない
たとえば、30万円もする高級浄水器の販売について例を挙げて説明する。
「この高級浄水器を使用すると胃癌が3ヶ月で治癒する」という宣伝文句があった場合、その内容は虚偽であるだろう。そうであるならば、①「不実告知」・「断定的判断の提供」に当てはまることとなり、購入契約を取り消すことができる。
「この高級浄水器は浄水機能が高すぎるため、夏場などには食中毒の原因となる危険性がある」という不利益なことを故意に伝えていなかった場合は、②「不利益事実の不告知」に当てはまることとなり、購入契約を取り消すことができる。
それから、販売員が訪問販売して、「買わないのでもう帰ってほしい」と言ったのに帰らなかった場合や、消費者が販売会場を訪れ、「買わないのでもう帰る」と言ったのに出口を閉められて帰らせてもらえない場合は、③「不退去型勧誘」・「監禁型勧誘」に当てはまることとなり、購入契約を取り消すことができる。
なお、消費者契約法によって認められた取消権は、追認できるときから6ヶ月、契約締結から5年で時効によって消滅すると定められている。
他に、「事業者の損害賠償の責任を免除する条項の無効」というものがあり、次の3類型が挙げられる。
①事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部または一部を免除する条項が存在したとしても、それは無効となる。
②消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為により消費者に生じた損害を賠償する民法の規定による責任の全部または一部を免除する条項が存在したとしても、それは無効となる。
③消費者契約が有償契約である場合において、当該消費者契約の目的物に隠れた瑕疵があるときに、当該瑕疵により消費者に生じた損害を賠償する事業者の責任の全部を免除する条項が存在したとしても、それは無効となる。
たとえば、先に挙げた高級浄水器の販売に関して、その契約書において、「当該の高級浄水器を使用することにより健康が損なわれた場合、事業者はその損害に対する賠償の責任は一切免除される」という項目があったとしても、その項目は無効となるのである。