精神保健福祉論2

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    資料紹介

    精神保健福祉論
    「障害者自立支援法の概要をまとめ、精神障害者がこの法による制度を利用する際の課題について論じなさい」

    資料の原本内容

    精神保健福祉論②
    「障害者自立支援法の概要をまとめ、精神障害者がこの法による制度を利用する際の課題について論じなさい」
     戦後、我が国では、障害者対策は、「児童福祉法」「身体障害者福祉法」「知的障害者福祉法」を中心に展開してきた。平成5年には、障害者の自立と社会参加を推進するため、「心身障害者対策基本法」が「障害者基本法」に改正された。この法律において、障害者は身体障害者、知的障害者、精神障害者の三つであると定義された。また、障害者の人権と尊厳を重んじ、生活を保障される権利を有すると同時に社会を構成する一員として、あらゆる分野の参画が認められており、これらに対する差別の撤廃ならびに障害者の諸権利を保障すべきであるとされた。
     精神障害者については、精神障害者の医療と保護の機会の提供を目的とした「精神衛生法」が1950年に、精神障害の人権保護と国民の精神保健の向上を目的とした「精神保健法」が1987年に制定された。1995年には、精神障害者に対する福祉施策の充実を目的とした「精神保健福祉法(精神保健及び精神障害者の福祉に関する法律)」が制定された。内容としては、精神科病院から社会復帰施設・地域社会での生活へと、ケアのあり方が変容した。
     2003年度から10年間の計画として、「新障害者計画」が定められた。その目標は、共生社会の実現を達成するため、障害者の自立を支えるものとなっている。障害者福祉サービスは、措置から契約という方向に転換されてきた流れである。自治体は、支援費支給制度のもとで、障害者福祉サービスを行なうこととなったが、財政の逼迫が問題となってきた。そのため、障害者福祉政策の抜本的な見直しとして、2005年に、「障害者自立支援法」が成立した。この法律では、「障害者が個人の尊厳にふさわしい生活の保障をされる権利と社会・経済・文化等あらゆる分野に参加する権利を有し、何人も障害者を差別し、権利権益を侵害する行為をしてはならないという基本理念に基づいて、障害者が自立した日常生活または社会生活を営むことができる」と謳っている。
     「障害者自立支援法」は、2006年から施行され、都道府県・市町村は障害福祉計画を策定することが義務付けられた。障害福祉計画を策定するときは、障害者基本法に規定する地方障害者計画(障害者のための施策に関する基本的な事項を定める中長期の計画)等の計画と調和が保たれるよう策定しなければならない。障害福祉計画は、障害福祉計画のなかの生活支援に関わる事項中、障害福祉サービスに関する3年間の実施計画的な位置づけである。
     「障害者自立支援法」による福祉サービスを希望する場合は、まず市町村に利用を申請することになる。市町村は、申請者の障害区分認定を決定する。その区分をもとにサービス利用計画案が指定相談支援事業者等によって作成され、市町村に提示される。利用者は、事業所を選択してサービスを受けることとなる。その利用料の10%が自己負担となる。
     「障害者自立支援法」成立以前は、支援費制度においては、三障害統合といわれながらも、身体障害者と知的障害者が対象とされ、この二障害と精神障害という構造が続いていた。「障害者自立支援法」は、「身体障害者福祉法」「知的障害者福祉法」「児童福祉法」「精神障害者福祉法」のそれぞれの法律における福祉サービスにかかわる部分が統合されてできた法律である。三障害を区別せず、統合、一元化し、障害者基本法の理念を実現したものである。
     「障害者自立支援法」の成立における障害者福祉施策の改革のポイント課題としては、以下のようなものである。①障害福祉サービスの一元化、②障害者がもっと働ける社会に、③地域の限られた社会資源を活用できるように規制緩和、④公平なサービス使用のための手続きや基準の透明化・明確化、⑤増大する福祉サービス等の費用を皆で負担しあう仕組みの強化。
     精神障害者がこの法による制度を利用する際の課題としては、次のようなものであろう。①無支援状態にある精神障害者がなおも存在しているため、サービスを利用しやすい仕組みをつくっていく。②利用手続きの煩雑さがあり、それが障害となっている面がある。③応益負担の原則により、サービス利用しづらくなった層が存在する。④退院後の生活場所が見つかりにくいこと、グループホームなどの施設への入所の困難さなどの問題がある。基準の変更によりホームヘルプサービスが受けづらくなった場合がある。社会資源の整備が必要である。⑤今後、国民の間において障害者の理念をより一層普遍化させることができるかが課題となる。
     参考文献:
     『精神保健福祉セミナー 4』、へるす出版
     『精神保健福祉』、学文社
     『障害者自立支援法活用の手引き』、かもがわ出版

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