ジョン・スチュアート・ミルの自由論を読んで、ミルの自由論が自由のために設定している条件に付いて書いた論文。3200字超。
ミルの自由論における自由の条件
−愚行は許されるか−
1 導入
J.S.ミルのOn libertyは、現代の倫理へ大きな影響を与えている。中でも他者危害原則は現代の自由の根本原理の一つである。他者危害原則とはOn libertyにおいてミルが強調する原則であり、「他者を害さない限りにおいて、個人の行為が他者や集団によって干渉、強制されることはない」というものである。我々がこの原則を考えるとき、その帰結として「他者を害さなければ何をしてもよい」という自由の論理が導出されうるように思う。しかし、ミルが想定した自由とは、「何をしてもいい」というものなのだろうか。ミルは、人々がどのように行動することを想定して自由論を書いたのか。本稿の目的はミルがOn libertyの中で他者危害原則以外に述べている自由の諸条件に着目することで、ミルが「自由な人々」に対して様々な倫理的態度を求めていることを明らかにすることである。
本稿の構成を述べる。まず、第二章でミルがOn libertyで最も強調した原則、すなわち他者危害原則の内容を確認する。続いて、第三章でミルが挙げた自由の諸条件を確認し、それらが必要...