『風姿花伝』を読んで
わたしが『風姿花伝』を初めて目にしたのは、大学入試で古典問題に取り組んだときでした。芸能についてどのようなことを善しとするかがとても美しい言葉と文体で書かれており、古典がそんなに好きではなかった高校3年生当時、内容を完全に理解はできなくとも、その美しさと古典作品の中でも群を抜いて美しい題名に非常に感銘を受けました。その入試問題で感じたことがわたしにとってとても大切な経験となり、英文科からこちらの日本語日本文化学科に編入学する契機ともなったほどです。
「こころざしの芸人よりほかは一見をも許すべからず」などと書かれているので、一介の大学生が秘すれば花の芸術論を読んでしまっていいものだろうかと躊躇いましたが、そんな戸惑いにも魅力を感じました。『風姿花伝』は全体的に大変興味深く、読んでいて楽しいと純粋に感じました。芸能に触れてはいても、その善し悪しは本当のところは全くわかりません。ですので、とても魅力的な芸術論である、という感想に終止しました。特に印象的だったものに、「秘すれば花なり、秘せずば花なるべからず」という言葉がありました。わたしはそれまで芸能のいろはを秘密...