総説アメリカ文学史 1975/4
大橋 健三郎 (編さん)
第3課題第1設題
リアリズムは、南北戦争以降、資本主義の発展とともに、進化論や新しいヨーロッパのリアリズム文学が紹介されるようになったことがきっかけである。その影響下で現実を描き、真実を追求する文学が生まれた。「地方色」文学として現れ、Mark TwainやHenry Jamesの作家によりリアリズムが確立した。1890年代~1910年代にかけて、リアリズム文学の範囲が拡張し、醜悪な実生活を描写する自然主義へと向かっていった。自然主義とは、「地方色」文学と違い、普遍的人間の姿を描き、新しい価値を追求したものである。
まず、Mark Twain(1835-1910)はAdventure of Tom Sawyer (1876)やAdventures of Huckleberry Finn (1885)によってアメリカ文学界に揺るぎない地位を築き、多くの今世紀作家に多大な影響を与えた。特にHuckleberry Finnには、豊かな自然や少年の目を通して描かれる近代文明や奴隷制度など社会に対する批判も含んでいる。自然な文体は国民的文学として支持され、今後のリアリズムの流れを決定付けた。...