英文学における古典主義からロマン主義への推移を、社会的・思想史的背景から説明せよ。
18世紀前半は古典主義の全盛期であり、後半はその衰退期である。小説や劇など散文の方面においては、それほど大きな変化はないが、痛烈もしくは辛辣な諷刺に代わって家庭向きの作品が多くなり、洗練された感情を主とする意味においてセンチメンタルな特色を帯びてくる。
イングランド銀行が1694年に設立されたころから国民生活は安定を得られ、またジブラルタルやブリントハイムにおける勝利、カナダの占領、インド帝国の樹立、7年戦争の勝利などのほか、殖産工業の進展においても、この世紀に英国は成功に成功を重ねる。その結果社会生活にも余裕ができ、中産階級ものんびりとした気持ちを持つようになり、礼儀作法を重んじた、たしなみのある紳士らしさが注目される。
そうした中で、今までは無視されがちであった読書の習慣は婦人の間にも徐々にひろまり、1709年版権法令の確立と相まって、文筆業の独立を助ける。
1710年代には文筆を執る者が激増し、当時の知識階級を形成した文壇人は、啓蒙思想の持つ合理主義の影響を受けて、何でも理性と論理に...